災害、平成の記憶

 平成という時代を振り返るときに「災害」という単語はきっとキーワードの一つとして挙がるだろう▲44人の犠牲者を出した本県の雲仙・普賢岳噴火は、平成初期の大きな自然災害。この噴火がまだ続いていた頃に、関西地方で大きな地震が起きた。1995年のきょう早朝のこと▲震度7の揺れに見舞われた神戸では、高速道路の橋桁が横倒しになり、多くの家屋が倒壊し、街の中から火の手が上がった。6千人以上が亡くなった阪神・淡路大震災▲その後も、大きな自然災害が相次いで日本列島を襲った。2011年には、犠牲者が関連死を含め2万人を超える東日本大震災が発生した。あの阪神大震災すら上回る大災害が起こったのだと、私たちは戦慄(せんりつ)した▲平成の30年間、大勢の人々が自然災害によって、日常が突然断ち切られる恐怖と人生が一変するほどの苦しみに直面した。つらい記憶を忘れようとしなければ生きていけなかった人もいるだろう▲時は止まらず流れていく。壊滅的な被害を受けた街も少しずつ街らしい姿を取り戻し、そこで震災前とは別の日常が営まれてゆく。それとともに当時のことが忘却されれば、いつかまた同じ悲劇が繰り返されるかもしれない。災害の記憶は、教訓として平成から次代へと語り継がねばならない大切なものの一つだろう。(泉)

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