マリー流のユーモアで全豪に惜別 元世界1位、引退後はコメディアン?

記者会見で涙をぬぐうアンディ・マリー=11日、メルボルン(AP=共同)

 今季限りで涙の現役引退を表明した男子テニスの元世界ランキング1位、アンディ・マリー(英国)が1回戦で敗退した四大大会の全豪オープンにユーモアを忘れない「マリー流」の別れを告げた。

 自身の写真共有アプリ「インスタグラム」を更新し「メルボルンを去り、何年も戦ってきた試合の数々を振り返っている。思い出をありがとう!」とメッセージ。センチメンタルな内容だったが、全豪への〝惜別投稿〟に選んだ過去の画像6枚が思わず吹き出すような構成で「引退後はコメディアンになって!」「偉大なレジェンド!」「大爆笑!」と別れを惜しむファンから喝采と反響が起こっている。 (共同通信=田村崇仁)

 ▽アフロヘアも

 写真の1枚目はファンの声援に応えるいつものまじめな場面から始まり、2、3枚目は自身を含め「ビッグ4」と呼ばれたロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)との若かりし頃の2ショット。そして4枚目に突然、アフロヘアの衝撃的な昔の姿を載せ、5枚目には表彰式で優勝したノバク・ジョコビッチ(セルビア)を後方からにらみつけるような自身の強烈な瞬間の顔で笑いを誘った。最後の6枚目はフォローするように、ジュニア時代から盟友だったジョコビッチとのにこやかな2ショットを掲載している。

 ▽素朴な人柄

 A・マリーと言えば、13年ウィンブルドン選手権で英国男子77年ぶりの優勝を果たした国民的英雄だ。地元スコットランドの独立に賛成の意思を示す政治的な発言をしたこともあるが、普段は素朴な人柄で多くの人から愛される。

 ロンドン支局時代、今も忘れられないシーンが、男子テニスの年間成績上位8人による14年の最終戦、ATPツアー・ファイナル。ジョコビッチと決勝で対戦するはずだったフェデラーが腰のけがを理由に棄権し、落胆する大観衆を救ったのが、緊急事態に大会側が慌てて呼び出した地元のA・マリーだった。

 この日は完全オフモード。自宅のソファで人気テレビゲーム「マリオカート」を満喫していたそうだが、エキシビションマッチの相手を務めた。ジョコビッチに敗れた試合後のあいさつで「ゲームでは勝っていたんだよ。テニスより上手だからね」。決して冗舌ではないが、英国人らしいユーモアがにじむ言葉に、満員の会場は大爆笑に包まれた。

 7月に自国開催のウィンブルドン選手権がある。近いうちに長年苦しむ臀部の再手術に踏み切るかどうかを決断する意向だが、願わくば「テニスの聖地」で再び輝き、有終の美を飾ってほしい。

男子シングルス1回戦でプレーするアンディ・マリー=メルボルン(共同)

アンディ・マリー(英国) 3歳でテニスを始め、06年にツアー初優勝。四大大会は12年全米で初制覇し、13年ウィンブルドンで英国男子77年ぶりの優勝。15年は兄ジェイミーと共に国別対抗戦のデ杯で英国の79年ぶり制覇に貢献した。12年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪で金メダル。191センチ、84キロ。31歳。

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