古市憲寿 「平成くん、さようなら」誰もがわかるであろう固有名詞がたくさん出てくる平成辞典型小説

誰もがわかるであろう固有名詞がたくさん出てくる平成辞典型小説

あと少しで“平成”が終わる。昨年の夏頃からずっと「平成最後の○○!」と題したモノを飽きるほど、目に、耳にした。平成に限らず物事はなんでも始まれば必ず終わるのにな、と。平成と共に人生を歩み平成以外の時代を知らないわたしにとって『時代の終わりとと共に、死にたいと思った。』という帯に身震いした。狂ってる。平成時代を象徴する人物としてメディアでも活躍をし、合理的な思考を持つ「平成くん」がある日突然、恋人の愛に「平成の終わりと共に安楽死をしたい」と告げることから物語が始まる。現代社会におけるセックスレスや恋人としての称号を求めない関係性、1日の大半を仕事の時間として費やす姿勢など、今を生きる人たちが直面している事がとてもリアルで合理的な中にも垣間見れる人間味がとても愛おしく、平成くんは作者・古市自身を擬人化した人物なんだろうな、と。誰もがわかるであろう固有名詞がたくさん出てくるので平成辞典型小説。(阿佐ヶ谷ロフトA:おくはらしおり)

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