アロンソ、ダカール戦うトヨタ・ハイラックスのテストを検討か。親友アル-アティヤが明かす

 2度のダカールラリーウイナーで、2019年大会でも競技9日目終了時点で総合首位を維持しているTOYOTA GAZOO Racing SAのナッサー・アル-アティヤは、2度のF1王者であり自身の親友でもあるフェルナンド・アロンソによる『トヨタ・ハイラックスEvo』のテスト実現に向けた話し合いを行っていることを明かした。

 事の発端はスペインのTVプレゼンターを務める世界的冒険家であり、自身もダカールラリーに参戦するヘスス・カジェハとのインタビュー中の発言で、カジェハとアル-アティヤが親しい仲であることを知るアロンソは「いつか自分もダカール・スペックのマシンをテストしてみたい」と語ったことから始まった。

 カジェハとアル-アティヤ、そしてアロンソが親しくなる契機は2017年。FIAクロスカントリーラリーの1戦でステージ中にスタックしていたアル-アティヤをカジェハが助けたことで交友が始まり、そのサポートへの返礼として同年のダカールラリーに向けアル-アティヤはカジェハの参戦費用を一部負担するなどして親交を深め、その交友の輪がアロンソにまでつながった。

 改めてアロンソのラリーレイド初体験に向け話し合いを進めていることを認めたアル-アティヤは、2月に開催される自身の故郷カタールラリーの前後で、テスト実現に向けた可能性を探っていると説明した。

「フェルナンド(アロンソ)は僕の親友であり、僕たちはその可能性についてここ数週間、相談をしてきたのは事実だ」とアル-アティヤ。

「彼は僕のマシン(トヨタ・ハイラックスEvo)をテストしたいと言ってきた。だから、このダカールラリーが終わったら『実現に向け何ができるか相談しよう』と話しているんだ。もちろん、その話にはヘスス(カジェハ)も加わってもらっている。僕たちはともにTOYOTA GAZOO Racingのドライバーだけど、テスト実施には彼らのサポートも不可欠だからね」

 この1月にはウェイン・テイラー・レーシングにジョイントし、IMSA最大のイベントであるデイトナ24時間に向けキャデラックDPiのテストを進めたアロンソは、2018年にトヨタのワークスドライバーとしてWEC世界耐久選手権に参戦し、ル・マン24時間を制覇している。

2019年大会も終盤を迎え、総合首位を堅持するナッサー・アル-アティヤとトヨタ・ハイラックスEvo
インディ500参戦に続き、トヨタ陣営に加入したWECでは伝統のル・マン24時間を制した

 TOYOTA GAZOO Racing SAでラリーレイド・プロジェクトの代表を務めるグリン・ホールは、日本のモータースポーツ部門から打診があっとことを認めつつ、もしアロンソが本気でラリーレイドへの挑戦意思を示した場合、トヨタはその支援を行う用意があると語った。

「我々はジニール・ドゥビリエでも同じ状況を経験した。彼は南アフリカ国内のツーリングカー選手権で4度のタイトルを獲得し、2003年のダカールラリーへのデビューに向けテストを行ったんだ」と振り返ったホール。

「フェルナンドのスキルが非常に卓越したものであるのは、過去17年間のキャリアを見ても明らかだ。彼がF1で見せた特筆すべき能力のひとつは、限界でプッシュしている際にも声を聞き、考えながら走ることができる点だ」

「これはいわずもがな、ラリーレイドで重要なキーポイントとなる才能だ。つねにコドライバーの声に耳を傾け、路面の勾配やサーフェスを読み、考えながらドライブする必要があるからね」

 一方のアロンソ自身はかつて自らの能力について「ラリーストの才能について敬意を払っているし、僕自身に関して正直に言えば、自分にはラリードライビングの才能はないと思う」と自己分析を語っていた。

 その点についてもTGRSA代表のホールは、ダカールラリーの第一人者であるアル-アティヤを南アフリカで実施するテストに帯同させ、アロンソをサポートすると同時にドライビング比較を行うことが習熟の助けになるだろうと話した。

「まず何よりもマシンを感じ取ること。そしてトップドライバーとのドライビング感覚の違いを比べることが有効だ。トヨタだけでなく、南アフリカの自動車産業やモータースポーツ界、そしてラリーレイドのコミュニティ全体にとっても素晴らしい機会になる」

「フェルナンドのダカールラリー参戦が実現すれば、信じられないほど素晴らしいストーリーだし、誰もが興奮と感動を覚えることは間違いない。このスポーツが爆発的に注目される原動力にもなるはずだ」

2月21〜26日に開催予定のカタールラリー前後に、南アフリカでのテストが計画されている
テスト実現の可能性が高まる中、ダカールラリー2020年大会のアロンソ参戦にも期待が集まる

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