やっぱり「不可解」 東京五輪招致のコンサル会社

〝けじめ〟をつけたシンガポール当局

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JOCの竹田恒和会長(左) タン・トンハン被告(右)

 2020年東京五輪招致のために招致委(理事長・竹田恒和JOC会長)が2億円超の契約金を「正当な対価」として支払ったコンサルタント会社の不可解な実態があらためて明らかになった。この会社のオーナーに対してシンガポール地裁は16日、自国の捜査当局にうその説明をしたとして禁錮1週間の有罪判決を言い渡した。この審理で招致疑惑のキーパーソンたちが知り合ったいきさつ、コンサル料として振り込まれた大金(約4100万円)が同社を通じてロシアのマラソン有力選手側の口座に振り込まれたとの捜査報告が裁判所に行われた。ストレーツ・タイムズ電子版(シンガポール紙)が報じた。竹田会長を贈賄容疑で聴取したフランス捜査当局の動向との関連も注目される。

(共同通信=柴田友明)

 北京五輪から始まった「懇意な関係」

 同紙の報道などによると、20年東京五輪招致委が契約していたシンガポールのコンサルタント会社ブラックタイディングス(BT社)の元代表タン・トンハン被告と、国際陸連会長・IOC委員を務めたラミン・ディアク氏の息子、パパマッサタ・ディアク氏は2008年北京五輪が開催された中国で知り合い、懇意になったとされる。

 15年のロシアのドーピング疑惑に端を発し、16年リオ五輪、18年平昌冬季五輪、そして20年東京五輪と3つのオリンピックにまたがる招致疑惑は国際陸連前会長のセネガル人親子が関与したと報じられてきた。当時IOC委員に強い影響力を持っていたディアク氏らとロビー活動を担うコンサル会社のタン被告との金銭のやりとりについて、フランスを含めた各国の捜査当局がこれまで解明を進めてきた。

 今回シンガポール地裁で①パパマッサタ・ディアク氏側から約55万シンガポールドル(約4400万円)の送金は実はコンサル業務の代金でなかった②パパマッサタ氏の指示で架空の請求書を作成した、との証言や証拠が得られたため、有罪判決が言い渡されたとみられる。タン被告は当局に追及されて、うその説明をしたことを認めている。さらに、シンガポール紙が報じたのは、タン被告がパパマッサタ・ディアク氏から指示されて、約22万シンガポールドル(約4100万円)をかつてのロシアマラソン界の女王、リリア・ショボホワ選手の夫の口座に振り替えたということだった。

ブラックタイディングス社の所在地だった公営住宅の一室=2016年、シンガポール(AP=共同)

 疑惑の連鎖?

 この金銭のやりとりについて詳細は報じられていない。しかし、一連の疑惑の端緒であるロシアのドーピング問題では、①ショボホワ選手がドーピング隠蔽を巡ってロシア陸連から賄賂を要求され支払ったこと②それでも資格処分となったため、タン被告のコンサル会社からショボホワ選手側の口座に返金があったことなどが知られている。世界反ドーピング機関(WADA)の調査報告やメディアも指摘しており、シンガポール側もこの金の流れを追認した可能性がある。

 一方、東京五輪招致疑惑について、JOCが設置した調査チームは2016年の段階でタン被告のコンサル会社について現地調査をしている。公営住宅にある会社の所在地に行き、近所の住民からタン被告の家族が以前住んでいたが、転居したと説明を受けたと調査報告に記載した。ただ、報告書には「ペーパーカンパニーではないかと報道されているが、断ずることは早計」「ロビー活動を行うコンサルタントは大型化、組織化されていない」などと記し、タン被告自身とは連絡が取れないにもかかわらず、疑いを持とうとしていない視点が目立つ。

 シンガポール捜査当局もタン被告の虚偽報告だけを立件。一連の五輪誘致疑惑の「本件」までは踏み込んでいない。報道では禁錮1週間の刑もただちに身柄を拘束せず、旧正月後の休暇を考慮して2月20日から行うとしており、全く厳しい姿勢は感じられない。しかしながら、民間の調査に依拠してその後、全く手を打たず、フランス当局の出方を待つ日本よりは、はるかに〝けじめ〟をつけたという見方はできるだろう。(共同通信=柴田友明)