第四十五回「あまりの心地良さに眠くなるハワイアン音楽の真髄」

ハワイアン音楽はまったくわからないのだけれど、あるとき、なんとなく聴いていたら、あまりにも心地良くなって、いつの間にやら眠っていたことがあります。

それから、ハワイアン音楽は、わたしの中で、眠れるものだということになっています。作業中やちょっとした休憩時に聴くのも良いのだけれど、最終的には眠くなるので、「もう寝ちゃっても良いや」という環境にならないと聴けません。仕事がはかどらないミュージックです。

それにしてもなんなのでしょう、ハワイアン音楽の、この底抜けの心地良さは。やはりハワイという素敵な環境があるからこそ、あんな素敵で、ほんわかした雰囲気が醸し出せるのでしょう。

現在、環状八号線の真横、大きなトラックが走ると揺れる家に住んでるわたしなんかが、ハワイに行ったら、歩いているだけで眠くなってしまいそうです。ですから最近は、トラックの走る音をかき消すように、爆音でハワイアン音楽をかけながら、眠っているわけなのです。

そんなこんなで、よくわからないけど、自分の音楽コレクションの中に入っているハワイアン音楽で、いつも聴いてるものは、ギャビー・パヒヌイの『Rabbit Island Music Festival』というアルバムです。

これ、たぶん、とんでもなく名作で、とても有名なものなのだろうけれど、なんせ聴いてると眠くなるので、アルバムについては、まったく調べてませんでした。で、いま調べたら、ギャビー・パヒヌイという方は、ハワイに銅像があるくらい有名な方みたいです。わたしは、ハワイアンといえば、高木ブーかKONISHIKIだと思っているような者でしたから、とにかくハワイアン音楽の奥深さを知ることができて良かったし、これからも眠くならない程度に探っていきたいです。

人生で、ハワイは一度だけ行ったことがあります。20年くらい前だったでしょうか、カメラを盗まれたくらいしか記憶がありません。

去年は、福島のスパリゾートハワイアンズに行きました。昔の常磐ハワイアンセンターで、映画『フラガール』の舞台にもなった所。とても楽しかったです。確かにハワイを感じることもできたけど、ハワイ感で、眠くはならず、酒を飲みまくって、それで眠くなった。

ハワイ、死ぬまでに、3回くらい行ってみたい。そして、雰囲気を感じて、ハワイアン音楽を聴いて、ビーチで眠りこけたいです。今度は財布を盗まれるかもしれませんけど。

戌井昭人(いぬいあきと)/1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。

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