【特集】
淡々と語る78歳の王さんの言葉から平成野球史の輝き、きらめきを感じた。プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長が18日、「平成を振り返る」というテーマで記者会見した。1995年の野茂英雄投手のメジャー入り、2000年の日本シリーズで長嶋茂雄監督率いるジャイアンツとホークスとの「ON対決」、06年の初のWBCでの優勝、世界一…。過去30年を回顧する王さんの思いを聞いているうちに、当時胸を熱くした数々の名場面を思い出した。一問一答とともに写真特集にまとめました。(共同通信=柴田友明)
【写真特集 野茂英雄投手のメジャー入り】
―平成に入って国内選手のメジャー移籍が始まります。それを今どう見ますか。もし王さんがあの時、全盛期の選手だったらメジャーを目指しますか?
「われわれの時代というのは、そういう道は閉ざされていました。考えたこともなかった。野茂君があの厚い壁を突破しようとして、見事に成功して道を切り開いてくれました。それが日本の選手たちにも火を付けた。球史に残る素晴らしいことをしてくれました」
「それまで米国のメジャーに対して何か仰ぎ見るところがありましたが、今の選手にはそういう点は全然ない。(野茂君のおかげで)日本の野球界のレベルが上がった。(当時の日米野球などオープン戦で自身は)手応えを感じていました。そこに山があれば登りたいと思う。僕は速い球を得意とするバッターでしたから、チャレンジしていると思います」
【写真特集 1994年のダイエー王新監督の就任】
―巨人監督を辞めた後のこころの変遷、94年にダイエーホークス監督に就任したときの思いについて。
「30年、巨人で選手、コーチ、監督をしてきたので、ほっとする気持ちになりましたが、それまでずっと戦いの中で生きてきたので、すぐに物足りなさ、戦いの輪から離れて寂しいという気持ちはありました。6年間ユニフォームを脱いできたので、(ホークスの当時の)根本監督に『ワンちゃん、俺の後に監督に』と声かけられて、オーナーから『優勝できるチームにしてほしい』と言われ、引き受けることにしました」
「(当初はホークスの)選手が求めているものと私が求めているものとの違いを感じました。彼らに常に問いかけて『何のために野球をやっているんだ』『勝つためなんだ』ということを本当に根気よく言い続けました」
―(当時負けたため怒ったファンが移動中のバスに卵を投げつける)「生卵事件」もありました。
「卵をぶつけられるような野球をやっているのは俺たちなんだと。屈辱ではあるけれど、それだけ南海時代からのファンが真剣に怒っている。正面から向き合わないといけない。われわれにとっていい刺激になりました。喜んでもらえるような野球をしようと、勝つためにどうしたらいいか、勝ちを積み重ね、少しずつ選手も変わっていきました」
【写真特集 2000年の日本シリーズ、ON対決】
―2000年の日本シリーズで長嶋茂雄監督率いる巨人と「ON対決」となりました。
「2000年の区切りに、神様もなかなか味なことをやると思いました。前の年に日本一になっているので(ホークスの)勢いはあったと思います。当時巨人は松井がいて、清原がいて、絶対勝つという思いで臨みました。長嶋さんとは初めての、そして最後の戦いでしたが、弟分の私として兄貴分の長嶋さんを超えたいという気持ちがありました。(結果として負けたが)この2000年というのは私にとって特別な年だと今でも思っています」
―長嶋さんが退院され、自宅でリハビリを始めているというニュースが先ほどありました。
「よかったなーと思っています。長嶋さんはとにかく特別な存在、やはりいつまでも元気で輝いてほしい人ですよね。日本中の野球ファンだけでなく、ほとんどの人がそれを待ち望んでいるので、じっくり体調を取り戻してほしいです」
【写真特集 2006年WBC初代王者】
―イチロー外野手や松坂大輔投手を擁した、2006年の第1回WBCで初代王者となりました。
「われわれとしては(各球団の)手を挙げてくれた選手と戦うということになりました。イチロー君が一番最初に僕に電話をくれて、『出ますよ』と言ってくれた。韓国戦で負けて選手たちの闘争心に火が付きました。(現地の)キャンプで日本の選手たちも段々やれると思うようになった。奇跡のようにキューバに勝ちました」
「これは余談ですが、第1回というのは(私は)強いようです。みんなが日の丸に向かって、勝つということに向かっていく選手たちの姿が頼もしかったです。20年五輪も、ものすごい力を発揮してくれるのではないか」
―大谷翔平選手について
「あくまで本人が決めることです。投手、野手どちらをやるかは。ただ、長く続けるなら、けがの少ない打者の方がいいと思います」
―野球人口が減ってきている。裾野広げるためには。
「野球はやったら本当に面白い。小さい子にやる場、知ってもらう場を提供していきたい。野球はお茶の間でああだ、こうだと言って入っていけるスポーツ。その魅力はこれからも変わらない」
「プロもアマもいろんな人が取り組んでいる。みんなが一本になって進めていかないといけない」
(※会見は日本記者クラブ)
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