【平成の地方自治 2019統一選】<3>公共事業 新設から維持管理へ

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 広島都市圏の西方にそびえる廿日市市の極楽寺山(693メートル)。山頂の北側にある温泉保養施設「アルカディア・ビレッジ」は昨年12月、大きな転換点を迎えた。「利用低迷で赤字が続き、修繕などの維持管理費も高額になる」として、オーナーの市がことし4月の休館を決めた。

 休館後は宿泊施設を解体し、キャンプや散策を楽しめる多目的広場として2020年夏の再開を目指す。市観光課の生永政志担当課長は「近隣に温泉施設ができるなど、環境が変わった」と説明する。

 市は1998年、ギリシャのアルカディア地方をイメージし、31億5千万円かけて建設した。きっかけは昭和から平成時代に移るさなか、当時の竹下登首相の発案で市町村に一律1億円が配られた国の「ふるさと創生事業」。ボーリング調査でラドン温泉という「宝物」を掘り当てた。

 ▽当初の見通し甘く

 当時を知る市幹部は「行政による温泉開発競争が激化する中、ばら色の将来像を描いた」と思い起こす。92年にまとめた計画には、当時の山下三郎市長が「21世紀の都市と自然との共生の先導的なモデルに」と言葉を寄せる。

 利用客は01年度に15万1千人に達した。しかし、その後は客足が伸びず、17年度には6万3千人まで落ち込んだ。運営に当たる指定管理者は近年、年900万~3600万円の赤字を抱える。老朽化により、浴場などで7億円規模の改修が必要なことも分かった。「将来の維持修繕費まで考えが及んでいなかった」。市幹部は当初の見通しの甘さを認めた。

 「ハコモノ」や道路の新設から、維持管理へ―。平成の30年で公共事業を巡る考え方は大きく変容した。91年のバブル経済の崩壊を受け、国の経済対策に乗って自治体は競うように事業を進めた。09年に誕生した民主党政権は「コンクリートから人へ」とハード事業を急減。12年に政権復帰した自民党も公共事業費の抑制を続けたが、インフラの老朽化や災害を背景に「国土強靱(きょうじん)化」を掲げて、上積みへとかじを切り始めた。

 ▽選択と集中重要

 「120万人都市」の広島市は近年、マツダスタジアム(南区)をはじめ大型事業を手掛ける一方、既にある施設を順番に点検し、予防的に補修する「長寿命化」の取り組みに軸足を置く。今後40年間、公共施設の更新や大規模改修に年平均474億5千万円(12年度比1・8倍)が見込まれる。橋や水道管路の老朽化対策のコストも増えるとはじいている。

 市行政経営課の大原秀朗担当課長は「あらゆる施設をそろえるフルセット主義では財政が持たない。選択と集中の考え方がますます重要になる」と訴える。

 人口減少に直面する小規模な自治体は、より厳しいやりくりを強いられる。税収の伸びは見込めず、多くは景気対策の公共事業によって増やした借金である地方債の返済にも苦しむ。刻々と迫る施設の更新や維持管理にどう対処するか、それぞれに問われている。

4月に休館するアルカディア・ビレッジ。開業当時は多くの利用者でにぎわった