神奈川県内初、有価物保管条例制定へ 再発防止で綾瀬市

 リサイクル用に収集された金属類などの有価物置き場での崩落や火災が市内で相次いだことを受け、綾瀬市は再発防止に向けた保管条例を制定する。野積みの高さ制限などを定める廃棄物処理法の規制が有価物に及ばないためで、条例で立ち入り検査や改善指導の権限などを設ける。市は市議会3月定例会に提出し7月の施行を目指すが、こうした有価物を対象にした自治体条例は県内では初めてという。

◆立ち入り検査や改善指導

 条例素案によると、使用を終えた後に収集された木材やゴム、金属、ガラス、コンクリート、プラスチックなどを原材料にした有価物(分解や破砕など処理されたものも含む)を「再生資源物」と定義。その取扱業者に適正な屋外保管を求め、崩落などの事故を未然に防ぎ、市民の安全確保や環境保全に寄与することを目的としている。

 業者に対しては市への届け出を義務化。再生資源物を積み上げて保管する際は、廃棄物処理法に準じた屋外保管の高さ基準を設定する。囲いに接する場合は、その高さよりも50センチ以下にとどめるとし、囲いから2メートル以上離れた場合は、26・5度の勾配を超えない積み上げ方を順守するともした。

 市は現状把握のために報告を求めることや立ち入り検査、改善のための指導・勧告ができる。罰則規定は設けないが、命令に従わない業者については業者名や住所、内容を公表する。業者に用地を貸している地権者への責務も明記した。

 市によると、4年ほど前に同市吉岡で相次いだ有価物置き場での事故を教訓として、再発防止に向けた検討を始めたという。

 2014年10月、台風による暴風雨で鉄板の囲いが一部壊れ、保管されていた金属類が隣接する民有地へ大量に崩落。15年1月には家電品から金属類などを回収していた事業所で作業中に出火し、県道が一時通行止めとなったほか、停電も起きるなど住民の生活に大きな支障が出た。

 16年7月の市長選で再発防止策を公約に掲げた古塩政由市長が当選後、国や県に要望を開始。しかし、同様の事例が少なく、関係法令を適用するのも困難で進展しなかったため、独自規制策を模索してきた。

 18年9月に条例素案を作成。同10~11月に募集した市民意見(パブリックコメント)を反映した後、市議会3月定例会に提案する予定だ。

 市内には現在、条例の対象になりそうな事業所が郊外の吉岡地区を中心に15カ所あるという。市環境保全課は「高い塀に囲まれ、内部の様子を確認するすべがなかった。置き場が増えた印象はないが、業者の入れ替わりは目立つ。住民が不安を抱かないよう、適正管理や安全に配慮した作業を求めていきたい」としている。

2014年10月の台風で崩落事故が起きた再生資源物の保管場所=綾瀬市吉岡

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