ゆがんだ統計

 統計数値の羅列はとかく無味乾燥に映りがちだ。だがそれから、人のさまざまな生活の姿が読み取れる。政府統計とはそういうものだろう▲その一つ、毎月勤労統計の不正調査を巡って、厚生労働省が揺れている。民間企業の賃金などを把握し、雇用保険や労災保険の給付額などを算出する基礎データになるが、全数調査しなければならない大企業について、厚労省が一部で勝手に抽出調査に切り替えていた▲その結果、統計の数値に表れる働き手の姿がゆがんだ。その影響を受け、延べ2千万人が本来支給されるべき額をもらえなかった。給付金を頼みに生活をつなぐ失業者にとって、いくら支給されるかは切実な問題なのだが▲政府はきのう、2019年度当初予算案に新たな追加支給関連費795億円を盛り込んで閣議決定をやり直す羽目になった。異例のことだ▲不正な調査は10年以上続いていた。厚労省は不正を正当化するマニュアルを作成し、後にそれを削除していた。ルール違反だと認識していたことを隠蔽(いんぺい)したのなら、なおさらたちが悪い▲昨年の国会審議では、労働時間の実態や失踪した外国人技能実習生を巡って、政府が示した調査結果に相次いで不適切な点が発覚した。政府の他の調査も信頼できるのだろうか-そんな思いが少しずつ募っていく。(泉)

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