新春対談1

東京都荒川区

©株式会社パブリカ

平成31年の新春対談は、俳人・対馬康子氏と西川区長が、日本の豊かな芸術文化の一つである俳句を中心に、荒川区の文化振興や、区の未来を担う子どもたちへの思いについて語り合いました。

■俳句で子どもたちの心を豊かに
司会:対馬先生の俳句との出会いと、荒川区の俳句振興に関わられたきっかけを教えてください。

対馬氏:私が俳句を始めたのは大学1年生のときで、俳人・中島斌雄氏の下に入門したことがきっかけです。昔から本を読むことがとても好きな子どもで、学校から帰って家にある本を読むのが、楽しみの一つでした。また、毎日のように貸し本屋さんに漫画を借りに行くような女の子でした。中学校・高等学校では文芸部に入り、そこで詩を書いたり、文章を発表したりして、その延長線上で俳句を始めたんです。詩から俳句へという経過をたどったので、とても自然に俳句というものに親しむことができたと思っています。
区の俳句振興に関わるきっかけとなったのは、「俳句のまち宣言」です。「奥の細道矢立初め全国俳句大会」や「一茶・山頭火俳句大会」等に参加しているうちに、「奥の細道千住あらかわサミット」の実行委員の任命をいただき、「俳句のまち宣言」にも関わることになりました。その後も、さまざまな俳句振興に関わらせていただいています。

区長:アーサー・シュレシンジャーというケネディ大統領の特別補佐官を務めたアメリカの歴史学者が、日本で講演をされた時に「子どもは未来社会の守護者である」とおっしゃっていたんですね。私はその言葉に強く心を打たれまして、自分が政治家になったら、その考えを主張していこうと決意し、今までやって参りました。未来を守る子どもたちのために、子どもたちの能力を広げていく責任が我々にはあると思っています。区でも子どもたちに向けた俳句の催しをたくさん行っています。その一つが「奥の細道矢立初めの地子ども俳句相撲大会」です。土俵を築いて呼び出しをすると、東西に分かれた子どもたちが長い紙に書いた俳句を見せて詠み合うんです。

対馬氏:この大会も今年で10回目を迎えますね。子どもたちもどんどん上手になっていて、毎年良い句が誕生しています。ぜひ、多くの方に観戦していただきたいです。子どもたちの俳句は、先入観のないまっすぐな、とても気持ちの良い句が多いですね。また、中学生と英語の俳句を作ったり、「俳句ハイク」と題したバスツアーで秩父に行って俳句を作ったりもしました。区では「読書のまち宣言」もされ、読書にとても力を入れていますよね。読書はさまざまな道で役に立ち、人生が豊かになっていくことを実感しています。ゆいの森あらかわには、何万冊もの児童書を所蔵されていると伺っています。ぜひ、皆さんにたくさん利用してもらい、本に親しんでほしいです。

区長:俳句を通して区の魅力を積極的に区内外に発信する取り組みも進めています。その一つが「都電DE(デ)俳句」です。区のPRラッピングを施した都電に乗車し、沿線の観光スポットで俳句を楽しむ催しです。また、松尾芭蕉や正岡子規等、著名な俳人が多くの句を詠み、区内各地に句碑が建立される等、区は俳句ゆかりの地です。平成27年には「奥の細道千住あらかわサミット」の開催を記念し、「矢立初めの地あらかわ」のシンボルとして、南千住駅西口駅前広場に松尾芭蕉像を建立しました。

対馬氏:区は芭蕉の時代から俳句と縁が深いですよね。俳句と写真をセットにした「フォト俳句コンテスト」も面白い催しです。散歩をしながら俳句を作ることを「吟行」といいますが、観光スポットを記載した「まちあるきマップ」等の観光パンフレットを片手に俳句ゆかりの地を巡って、歴史をたどりながら吟行したり写真を撮ったりするのも楽しいと思います。

■あらかわの財産であるモノづくり
司会:本日の対談を記念して、対馬先生が区民の皆様に向けて新春の句を作ってきてくださいました。この句に寄せた先生の思いを教えてください。

対馬氏:「モノづくりことばを創る明の春」という句です。「明の春」というのは、新しい春をことほぐ季語の一つです。新年と同じですね。「モノづくり」というのは、区はモノづくりのまちだということですが、本当にその通りだと思っています。吟行でまちを回ったときに、リヤカー屋さん・自転車屋さん・三味線屋さん等に伺って話を聞いたんですが、一つひとつがとても面白く、深くて感動しました。区には伝統工芸がたくさんありますよね。丹精込めてモノを作るということは、「モノに命を与えることだ」と思ったんです。命を与えるということは、言葉を紡いでいるということにつながると考えて、「モノづくりは言葉を作ること。それは俳句を作ることに重なっていく」、そういった思いでこの句を作りました。

区長:素晴らしい句ですね。区はもともと職人さんのまちであり、「モノづくりのまち」と冠して「モノづくり見学・体験スポットガイド」の冊子を作成しています。モノづくりは区の財産だと考えています。