今年も「撥ね木搾り」で新酒 伝統技法にこだわり

 長崎南島原市有家町の酒造業、吉田屋(吉田嘉明代表社員)で、全国でも珍しい「撥(は)ね木搾り」という伝統技法による新酒の搾り作業が今年も進んでいる。
 撥ね木搾りは、天井からつるしたカシの撥ね木(長さ約8メートル)の重さとてこの原理で、もろみから日本酒を搾る技法。全国で数軒しか残っていない。機械と違ってゆっくり搾るため、雑味がなくまろやかな味わいに仕上がるという。
 吉田屋では1917(大正6)年の創業時からこの技法を約半世紀使っていたが、機械化が進んだため69年ごろいったん廃止。伝統へのこだわりを持つ4代目の吉田さん(57)が2001年に復活させた。
 仕込みを昨年11月、搾りを同12月から開始。もろみの入った袋を槽(ふね)と呼ばれる枠に敷き詰め、撥ね木に重しをかけて徐々に圧力を加える作業をほぼ毎日行う。仕込みと搾りは今年4月まで続く。
 吉田さんは「気温の変動があって仕込みの温度調節に苦労したが、今季もよくできた。手間はかかるが、伝統のおいしいお酒を届けたい」と話す。

撥ね木に重しのポリタンクをかける吉田さん=南島原市、吉田屋

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