<大槌町旧庁舎>本体解体工事始まる 2月に作業終了、跡地は防災用空き地に

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本体解体工事が始まった大槌町の旧役場庁舎=19日

 東日本大震災の津波で当時の町長と職員多数が犠牲になった岩手県大槌町の旧役場庁舎で19日、本体の解体工事が始まった。震災遺構として残すか否かを巡って長らく町民を二分してきた建物が、ついに姿を消す。2月中旬には取り壊し作業を終え、跡地は防災用の空き地とする計画だ。

 午前9時20分ごろ、重機で西側の壁面や天井の取り壊しに着手し、20分ほどで建物2階に大きな穴が開いた。今後、建材などの廃棄物を穴から搬出し、解体を本格化させる。

 元鹿児島県南さつま市職員で任期付き職員の都市整備課長川野重美さん(62)は「旧庁舎の保存を訴える町民や遺族の思いも分かる。複雑な気持ちだが、解体する側の立場として安全、確実に作業を進めたい」と話した。

 旧庁舎で町職員だった兄健さん=当時(30)=が犠牲になった倉堀康さん(35)は、黙とうもなく始まった作業に「ただの仕事だと思っているのだろう」とぶ然とした表情で語った。

 倉堀さん自身、旧庁舎の解体を求めてきたものの「単純に『解体してよかった』とはとても言えない。切ないし、寂しい」。重機の爪が食い込む旧庁舎を見詰めて「兄は解体を望んでいたのだろうか」とつぶやいた。

 旧庁舎の解体は「建物を目にすることで耐え難い思いをする町民に寄り添いたい」と主張する平野公三町長が主導。解体差し止めを求めた住民訴訟は17日、盛岡地裁が訴えを退けた。町は18日に本体の解体を始める予定だったが、強風の影響で1日延期した。