期待も寂しさも

 皆があっと驚いた。期待の声が上がり、「営業のやり方も違う。社風も違う」と戸惑う声も上がった。3年ほど前、2016年2月27日付の小紙は、県内の騒然とした様子を伝えている▲十八銀行(長崎市)が、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)と経営統合し、FFG傘下の親和銀行(佐世保市)と合併する方針が示された、その時の紙面である。ライバル2行の、まさかの合併路線だった▲人口が減る。金融の市場はしぼむ。なのに県内2大銀行が競っていては共倒れになりかねない。ここは合併で経済の足場を固めるほかない-という筋書きだったが、そこから先が実に長かった▲公正取引委員会の審査が延々と続き、気をもんだ末に、2行の統合計画が承認されたのは昨年8月のこと。当時の小紙には、関係者の安堵(あんど)の言葉がずらりと並ぶ▲きのうの紙面には「寂しい」と漏らす声がある。十八銀としては最後の株主総会が開かれた。経営統合は長崎の未来のため。そう納得ずくでも、関係者にふっと湧く心持ちだろう▲仰天、期待、不安、やきもき、安堵、寂しさ。時間のかかった統合・合併劇はその分だけ、幾多の感情を呼び起こしてきた。期待も寂しさも、極まるのはこれからだろう。計画では来年10月、2行が合併して新銀行が生まれる。(徹)

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