熊本地震で被災建物の公費解体終了 マンション復旧に課題

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全壊判定を受け、公費解体した分譲マンション「メゾン本荘」の跡地に立つ住民や弁護士ら=熊本市中央区

 熊本地震で被害を受けた建物の公費解体が昨年末、終了した。熊本市内で解体を終えた被災マンションも“次の段階”へ進みつつあるが、敷地売却を決めて「やっと次へ踏み出せる」と胸をなで下ろす人の一方、今も見通しが立たない住民もいる。熊本地震から2年9カ月。合意形成に時間がかかるマンション復旧の難しさが浮き彫りになっている。

 市によると、市内で被災した分譲マンションは635棟で、全壊判定は19棟。全壊15棟と半壊1棟の計16棟(計527戸)が公費解体された。うち全壊の1棟(89戸)は、自費解体後に国の補助を受けた。

残るハードル

 全壊判定の「メゾン本荘」(中央区、45戸)は公費解体後、2018年12月22日に東日本大震災後に改正された「被災マンション法」に基づき敷地売却を決めた。熊本地震では初のケース。柱や壁などの損傷が大きく、住民は資金不足などを理由に修復・建て替えを断念。17年3月に解体を決議していた。

 通常、マンションの解体や敷地売却には区分所有者全員の同意が必要だが、円滑な復旧を進めるために制定された同法では、8割以上の多数決で決議が可能になる。メゾン本荘も、権利を持つ41人中40人が同意し、跡地売却を決議した。

 しかし、売却までにはまだハードルが残っている。マンション管理士でもある松永伸太郎弁護士によると、同法による「売り渡し請求」で同意していない1人の所有権を取得することはできるが、登記手続きに協力が得られないと訴訟になり、最長で1年半程度かかるという。

 それでも売却に道筋を付けた住民の表情はすっきりしていた。管理組合法人の前理事長、吉田光江さん(53)は「話し合いが難航して時間がかかったが、これで新しい生活のために動き出せる」と話す。

支援「不十分」

 日本マンション学会・熊本地震特別研究委員会のメンバーで、県マンション管理士会の稲田泰一副理事長(71)は、市内の全壊マンションの復旧経過を調べている。「全壊判定で解体されたマンションのうち、少なくとも8棟が敷地売却の意向と聞く。修復・建て替えに巨額の費用がかかるため、再建の際に入居戸数を増やすなどの策が取れなかったり、地震保険に未加入で修繕積立金が不足気味だったりすると建て替えは難しい」と指摘する。

 稲田さんによると、全壊マンションで建て替え工事に着手できたのは「上熊本ハイツ」(5棟、計100戸)のみ。建て替えを検討中も1棟あるという。

 市震災住宅支援課は「公費解体を断念したマンションもあり、建て替えや修理などで4件の相談を受けている。住民の同意形成が難しいと聞いている」。再建策を助言するコーディネーターを派遣するほか、建て替え時の設計費補助などで支援するとしている。

 日本マンション学会・熊本地震特別研究委員会で委員長を務める折田泰宏弁護士は「今も復旧の方向性を決められず、全壊マンションに住んでいる人もいる」と指摘。「被災マンションに対する法整備や行政の支援はまだまだ不十分。国や自治体は、もっと問題に目を向けてほしい」と訴える。(熊本総局・猿渡将樹)

(2019年1月21日付 熊本日日新聞朝刊掲載)