「名建築の記憶」後世に 元熊本市職員が「市役所花畑町別館」写真集 歴史刻んだ表情紹介

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茶褐色で落ち着いた雰囲気の外観だった熊本市役所花畑町別館。今は解体され、跡地は駐車場となっている=2016年3月(武藤暉彦さん提供)
75歳の誕生日の13日、熊本市役所花畑町別館の在りし日の姿を収めた写真集「記憶」を出版した武藤暉彦さん=熊本市中央区
各階をつなぐ、吹き抜けのらせん階段=2016年3月(武藤暉彦さん提供)

 昭和のモダニズム建築として知られた熊本市役所花畑町別館の写真集「記憶 熊本市役所花畑町別館」を、元市職員の武藤暉彦[てるひこ]さん(75)=中央区渡鹿=が自費出版した。戦争や大水害、熊本地震を生き延びた4階建てのビルは2017年に解体されたが、「80年にわたり親しまれてきた名建築があったことを後世に伝えたい」と話す。

 同館は1936(昭和11)年、逓信省熊本貯金支局として、日本武道館などを手掛けた建築家・山田守(故人)が設計。75年から市役所別館として使われた。採光のための大型窓や円弧の意匠など、装飾を施さない機能美が特徴。国際学術組織などから保存を求める声も多かったが、老朽化や耐震不足を理由に取り壊された。

 武藤さんは広報課や市史編纂[へんさん]室などに勤務し、通算約6年間を同館で過ごした。「特にらせん階段に愛着がありました。あえてエレベーターを使わず、考え事をしながら上り下りしていたものです」と懐かしむ。

 定年退職後も、同館が閉鎖される2016年まで約1年間、熊本城顕彰会事務局に通っていた。収録した写真は武藤さんがその際に撮影した35点が中心。外観や玄関、らせん階段、リズミカルに配置された窓など、歴史を刻んできた建物の“表情”を切り取った。

 「個人的な思い出のつもりだったが、今は駐車場となった場所にあった建物は、多くの人の記憶に残っていると思う。懐かしさを感じてもらえればうれしい」と武藤さん。

 カラーA5判、64ページ、950円。市内の主な書店で販売しており、売り上げの一部を被災した熊本城の復元整備のために寄付する。熊日出版TEL096(361)3274。(松冨浩之)

(2019年1月20日付 熊本日日新聞朝刊掲載)