社説:ゆうちょ限度額 民業圧迫の懸念さらに

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 ゆうちょ銀行の預入限度額が4月から、現在の2倍の2600万円へ引き上げられる見通しだ。

 政府は郵政民営化委員会が示した報告書を了承した。実現されれば3年前に1千万円から1300万円に変更して以来となる。

 退職金などのまとまったお金を預けられるようにして利便性を高めるためという。利用者にとって使い勝手が良くなるのは確かだ。

 ただ、ゆうちょ銀は国が6割弱の株式を保有する日本郵政の子会社である。政府の信用を後ろ盾とする貯金に上限が設定されているのは、他の民間金融機関の経営を圧迫しないためだ。

 政府の関与が残り、完全民営化の道筋も見えない状況で業務規制を大きく緩めることは民間との競争条件を一段とゆがめかねず、公平性を欠くのではないか。

 地域金融機関の経営環境が厳しさを増す中、地方銀行などから顧客の預金が流出するとの懸念が根強い。民業圧迫につながる規制緩和には疑問を抱かざるをえない。

 今回の引き上げを巡っては当初、自民党などが限度額自体の撤廃を要請した。党の有力な支持基盤で全国約2万人の郵便局長でつくる全国郵便局長会(全特)が求めていたからだ。民営化委も一時は撤廃に前向きだったが、金融庁や民間金融機関の反対もあり、限度額倍増で決着を図った。

 3年前の限度額引き上げと同じ光景が繰り返されたと言える。夏の参院選を前に、要望に応じることで政権与党が「集票マシン」を利用しようとしているとの見方が出ている。だが選挙目当ての政治判断で、上場企業の形がゆがめられることはあってはならない。

 一方で気になるのは貯金の活用方法だ。貯金残高約180兆円を誇るゆうちょ銀がさらに資金を集めても低金利の国債運用が中心の現状では利益を出すのは難しい。国債価格の変動で損失を抱えるリスクや、民間からの資金流出で地域の企業への融資に支障が出たり金融システムに悪影響が出たりすする可能性も指摘されている。

 報告書では通常貯金の限度額を将来さらに見直す場合、日本郵政が保有するゆうちょ銀株を3分の2未満に下げるとの条件を付けた。だが郵政民営化法には株式売却は既に明記されており、売却への具体的道筋を示すのが先決だろう。

 業務規制の緩和は一定必要としても、透明性をもって行われるべきだ。政府は日本郵政グループの経営やガバナンス体制を適切に監視することが求められる。