【こちら編集局です】野良猫に餌やり、困惑 条例でルール化必要

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広島市内でも「地域猫」はいるが、浸透への道のりは遠い(西区大宮2丁目)

 「野良猫に餌をやる人が近所にいて困っています」。広島市内の会社員男性(52)から無料通信アプリLINE(ライン)でこんな声が届いた。近所で繁殖し、自宅の庭先でふんをされるなどして迷惑しているという。「よくある地域の問題」でありながら、根は深い。解決の糸口を探った。

 声を寄せてくれた男性宅の庭。隅に猫が掘った小さなくぼみがあり、中からふんが出てきた。男性は憤る。「なぜ飼ってもいない猫のふんを毎日掃除しないといけないのか。震えがくるほどストレスなんです」

 ▽対策しても来る

 ふん尿の被害は3年ほど前から。家族が猫アレルギーのため、塀に猫を寄せ付けないマットを敷き、庭には猫が嫌うとされる低周波を出す機械も設置した。それでも毎日5、6匹が来る。車のボンネットを爪で傷つけられたこともあり、これまで修繕費などに約20万円を費やした。「もう我慢の限界」と訴える。

 一方、餌をやる60代女性は「おなかをすかせた猫を放っておけない」と言う。「私の顔を見てミャーと寄ってくる。かわいそうで。近所で苦情が出ているのは知っているけれど、どうしようもない…」

 こうした状態を放置すれば、地域に亀裂が生じかねない。どうすべきか―。自治体はルールを決め、共通認識として定着させる責務がある。そのために、条例という手段があるのだろう。自治体が決める「法律」のようなものだ。

 実際に条例を定めた自治体がある。京都市は2015年、「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」を制定。「適切な給餌」を求めた。野放図な餌やりは野良猫を増やす。それは殺処分を増やすことにつながるという考え方だ。

 ところが、この条例が波紋を呼ぶ。「適切な」という言葉が分かりにくく「餌やり禁止」ばかりが注目され、動物愛護の精神に欠けると苦情が相次いだ。

 禁止をうたうだけではなく、対案を提示する必要がある。それを盛り込んだのが和歌山県だ。17年、「地域猫活動」の推奨を全国で初めて条例に明記した。野良猫を捕まえ、不妊・去勢手術をし、元の場所で住民が飼育する取り組みだ。即効性はないが、いずれ猫の数は減り、ふん尿などの被害も減るとされる。

 ▽ふん尿苦情減少

 「『餌やり=悪』ではなく、餌やりをしましょう、ただし適切なルールで―と訴えたのがポイント」と坂田貫(とおる)主査(42)。野良猫の数を把握し、近づいて捕まえ、避妊・去勢手術につなぐには日常的な餌やりが欠かせない。そのことを住民に地道に説明した。すると、これまで隠れて餌やりをしてきた人も地域猫活動に賛同するように。いま活動は209地区に広がり、2年で3倍に拡大。「ふん尿などの苦情も減少した」という。

 では、今回の現場である広島市はどうか。京都市の混乱などを受け、「野良猫への餌やりを規制する条例は考えていない」(動物管理センター山下真里次長)と後ろ向きだ。苦情が寄せられた場合は、餌をやる人に「やめてほしい」と指導しているという。それでは「隠れてやる」に変わるだけだろう。地域猫活動に熱心な地域もあるが、まだ一部でしかない。

 広島市を含む県内の野良猫の殺処分数は17年度137匹。少ないのは13年度から市内の愛護団体が大半を引き取り譲渡などにつないでいるからだ。実際は3269匹が保健所などに収容されている。この数を減らす努力は不可欠なはずだ。

 数を増やさないための仕掛けを行政が担い、地域が協働して定着させる―。そんな循環を築くには、やはり独自の条例が必要なのではないか。自治体の本気度を示すためにも。