筒抜けの個人情報

 「ポイントカード、お持ちですか」。コンビニや書店やスーパーのレジで、店員が客に声を掛ける。それに応じて客がカードを差し出すのは日常の光景だ▲会員登録した客はカードにポイントをため、お得な買い物ができる。ポイントカードにはその履歴が記録され蓄積される。誰がいつどこで何を購入したかというデータは、客層に合わせた仕入れや商品開発などに活用でき、会社が売り上げを伸ばす鍵となる▲客と会社の双方にメリットをもたらすシステムの裏で、プライバシーに関する重大な問題が発覚した。ポイントカード最大手の「Tカード」の会員情報について、捜査当局が裁判所の令状を取らずに運営会社に提供を要請し、会社側がそれに応じているというのだ▲客の氏名や住所、ポイント履歴などの個人情報が、外部のチェックを経ずに捜査関係者に渡っていた。会員規約に記載されていないため、会員は何も知らなかった▲客にとってみれば、自分の行動や趣味嗜好(しこう)が、国家権力に筒抜けになるかもしれないということだ。それがこっそり行われていたことには不信感を抱くほかない▲Tカードの会員は6700万人を超えるという。それほど大量の個人情報が捜査機関の意のままに収集されうるとしたら、空恐ろしい社会になったと震えがくる。(泉)


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