<原発ADR>東電拒否で打ち切り相次ぐ 住民批判「賠償の仕組み崩壊させる」

©株式会社河北新報社

集団ADRの相次ぐ打ち切りを受け、中間指針の見直しを求めて記者会見する清野さん(右端)ら住民と弁護士=18日、福島県庁

 東京電力福島第1原発事故の賠償を求め、住民が集団で申し立てた和解仲介手続き(ADR)が、東電の和解案拒否の末に相次いで打ち切られている。住民側は「賠償の仕組みを崩壊させる」と強く批判。国の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の次回会合が25日に迫る中、賠償基準となっている中間指針の見直しを求める声が高まっている。

<現時点21件>

 「国の政策って何だ、ADRって何だと思った」。福島県川俣町小綱木の清野賢一さん(72)は憤る。

 清野さんは地区住民566人の代表。2014年9月に申し立てたADRは18年12月に打ち切られた。

 原子力損害賠償紛争解決センターが18年2月に示した和解案は、562人に1人当たり20万円の追加賠償を認めた。月額10万円の請求とは懸け離れていたが、清野さんらは苦渋の思いで受け入れを決断。それだけに東電の拒否は「大きなショックだった」。

 東電の和解案拒否に伴うADR打ち切りは、少なくとも現時点で21件。大半が100人以上の住民が申し立てに加わっていた。和解案提示を受けながら賠償されなかった人は1万7000人に上る。

 18年4月に打ち切られた同県浪江町の集団ADRは最多の1万5313人。今年1月には福島市渡利の3107人が参加したADRが打ち切られた。

<解釈にずれ>

 和解が実現しない原因には、一律賠償を拒む東電の姿勢に加え、中間指針を巡るセンターと東電の解釈のずれがある。

 川俣町小綱木の場合、センターは避難区域に隣接する事情などを考慮。「(区域かどうかで線引きした)中間指針と異なる賠償額が算定され得る」と認めた。住民側弁護士によると、東電は「住民の精神的苦痛などは(区域外への賠償を示した)中間指針に織り込み済み」と主張した。

 東電の拒否によって協議は長期化。「迅速かつ適正な解決」というADRの目的が果たせず、センターが打ち切りに踏み切っているとみられる。

<文書で要請>

 住民側が事態打開へ注視するのは原賠審の対応だ。中間指針は11年8月の策定から第1~4次の「追補」を加えただけで、本格的な改定はしてない。

 六つの住民側弁護団は17日、より具体的な賠償指針策定や東電への指導強化を原賠審に文書で要請。県弁護士会も8日、同様の趣旨の会長声明を発表した。

 和解協議中の伊達市富成の1191人による集団ADRを支援する鈴木雅貴弁護士は「指針に対する東電の解釈が実態と合っているかどうか、原賠審の職責で調査や評価をするべきだ」と指摘。「25日の会合では原賠審の存在意義が問われている」と強調した。