「王者になって長崎に恩返し」 全日本新人王のプロボクサー辻本純兵選手(長崎市出身) 入門5年 引退覚悟の大会制す

 長崎市出身のプロボクサーで東京の名門ジム、帝拳所属の辻本純兵選手(24)は昨年12月、東京・後楽園ホールであった「第65回全日本新人王決定戦」ウエルター級(66・68キロ以下)で勝利し、全日本新人王の座に就いた。2013年9月の入門から5年余り。「負けたら引退」とひそかに決意した上での挑戦だった。「チャンピオンになって長崎を盛り上げたい」と活躍を誓う。
 「うれしい気持ちよりも『もっと、こうできた』と反省しかなかった」
 勝利の感想を尋ねると、“反省”の言葉が返ってきた。落ち着いた様子に、さらに上の目標を目指す気概がにじんだ。
 瓊浦高ボクシング部出身。卒業後、東京で1年半の会社勤めを経て入門。14年3月、プロに合格した。187センチの長身から繰り出す、リーチが長く威力も抜群のパンチが武器。同年9月の初戦はKO負けのほろ苦いデビューとなり、16年末にはヘルニアが悪化して腰を手術。練習ができない日々が続いたが、17年9月の復帰戦で念願の初勝利を飾った。
 全日本新人王決定戦は、階級ごとの地区別トーナメントや対抗戦を勝ち上がった東西の代表選手が雌雄を決する。辻本選手は、10人が出場したウエルター級の東日本新人王トーナメントで優勝。長崎から友人、家族ら約30人が応援に駆け付けた決定戦では、デビュー以来全勝の強敵相手にダウンを奪い、3-0の判定で勝利した。
 「ボクシングをするのは楽しいし、勝つと周りがすごく喜んでくれる。自分が一生懸命やっているところを見てもらえる仕事って、そんなにない」と魅力を語る。現在の戦績は4勝(2KO)1敗3分け。新人王をステップに「まずは日本チャンピオンを目指したい」と先を見据えた。
 プロといっても、ファイトマネーだけでは生活できない。早朝からアルバイト、午後にジムでトレーニングに励み、夜はロードワークという日々。同時期に入門した仲間も次々とジムを去った。「誰にも言わなかったけれど、全日本新人王が取れなかったら引退すると決めていた」と打ち明ける。
 それでも「好きな気持ちにうそはつけないから頑張るだけ。しんどくても、楽しいから続けられる」と迷いはない。「有名になって、育ててもらった長崎に恩返ししたい。応援してください」と笑顔を見せた。

「チャンピオンになって長崎を盛り上げたい」と語る辻本選手=東京都内

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