ボルト氏、プロサッカー選手の夢断念 次は「実業家に挑戦」

オーストラリアAリーグ、セントラルコーストで実戦デビューした練習生のウサイン・ボルト氏=2018年8月、ゴスフォード(ゲッティ=共同)

 陸上男子100メートル、200メートルの世界記録保持者で2017年に陸上競技から引退した元スーパースター、ウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)が「長年の夢」として思い描いてきたプロサッカー選手への転向を断念した。英BBC放送によると「スポーツ選手としての人生は終わりだ」と表明し「今後は実業家に挑戦したい」と新たな野望を口にした。
(共同通信=田村崇仁)

 ▽練習生で契約も

 大のサッカー好きで知られる32歳のボルト氏は、陸上選手時代からイングランド・プレミアリーグの人気クラブ、マンチェスター・ユナイテッドの加入を夢見ていると公言してきた。引退後は昨年3月に香川真司が所属するドイツ1部リーグ、ドルトムントの練習に参加し、同8月にはオーストラリアAリーグ、セントラルコーストに練習生として加入。エキシビションマッチでは100メートルを人類最速の9秒58で走る快足が最大の武器で、196センチの長身を生かしたヘディングシュートや器用な足技でも非凡な才能を見せた。「常に何ごとも可能だと言ってきた。挑戦を楽しみにしている」と意気込み、クラブ側も「ボルト氏の燃えるような野望に応えたい」と交渉を継続してきたが、プロ契約には至らなかった。

昨年6月に行われたサッカーのチャリティーマッチでプレーするウサイン・ボルト氏=パリ(AP=共同)

 ▽レストラン経営も

 世界のスーパースターでは、かつてバスケットボールで「神様」と呼ばれたマイケル・ジョーダン氏(米国)が野球への転向で注目を集めた例もある。五輪で通算8個の金メダルを獲得したボルト氏は人気と知名度も抜群。各国でファンの期待も高まったが「サッカーへの挑戦は素晴らしい経験だった。多くを学んだし、クラブの一員となれて本当に楽しかった」と短い〝サッカー人生〟を振り返った。その上で「僕は今、違うビジネスへの転身へ向かっている。さまざまな計画があり、ビジネスマンになるための努力をしているところだ」と近況を明かした。

 かつてジャマイカでインタビューに応じてもらった際、将来は自分のレストランを持ちたいと夢を語ったことがあるが、既に母国の伝統料理を楽しめるレストランを「第二の故郷」という英国のロンドンに出店。著名なDJとともにレゲエ音楽やダンスを楽しめる場所を各国で展開したい構想もあるようだ。

 トラックから芝のピッチ、そしてビジネスの世界へ。世界最速の男は、スポーツ以外の新たな分野でも限界に挑む。

ロンドン五輪の陸上男子100メートルで金メダルにかがやいたウサイン・ボルト選手(共同)

 ウサイン・ボルト(ジャマイカ)子供の頃はクリケットに取り組んだ。才能を見いだされて陸上に専念し、200メートルで2004年アテネ五輪に初出場した。09年に100メートルで9秒58、200メートルは19秒19の現世界記録を樹立。五輪は08年北京大会から3大会連続で100メートルと200メートルを制覇。世界選手権は15年大会まで100メートルを3度制し、200メートルは4連覇した。196センチ、94キロ。32歳。

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