黒字なのになぜ休止?上野動物園モノレール そこには、パイオニアゆえの悲哀があった

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2019年1月23日、東京都交通局は上野動物園モノレールを今年11月1日から運行休止すると発表した。

上野動物園を走るモノレール( Ys [waiz] さん撮影、Flickrより)

Ueno Zoo Monorail 上野懸垂線(上野動物園モノレール) 40形

上野動物園のモノレールの正式名称は上野懸垂線。園内の東園駅と西園駅を結ぶ約300メートルの短い路線ながら、ここ数年はパンダのシャンシャン効果も手伝って毎年100万人以上が乗車。途中不忍池を一望できるなど眺望もよい。

東京都交通局公式サイトによれば、17年度の乗車料収入は1億2800万円、経常利益は2400万円の黒字だ。経営状態は決して悪くない。

にもかかわらず休止を決めた理由は、車両と設備の更新のコスト。2001年から運行中の現行車両「40形」を新型に置き換えるのに10数億円、車両製造に3年かかるという試算を都交通局は算出している。そこで現行車両が老朽化したため一旦運行を休止し、都民や有識者の意見を参考に存続か否か結論を出すとのことである。

どうして更新費用がこれほど高額かつ時間がかかるのか――そこにこのモノレールの特殊さと悲哀が垣間見える。

互換性のない、孤立したシステム

1957(昭和32)年に日本初、また最短のモノレールとして開業したこの上野モノレール。当時モノレールは「未来の乗り物」として注目されていて、路面電車に代わって都市交通の主役になりうる可能性に着目して上野動物園で実験的に開業した。

1本のレール(軌道)だけで走るモノレールにはいくつかの方式があるが、大きく分けると軌道にぶら下がる懸垂式とまたがる跨座式に分かれる。上野モノレールは軌道に車体がテナガザルのように片側からぶら下がるスタイルで、通称「上野式」と命名されている。世界初のモノレールであるドイツのヴッパータール高速鉄道のスタイルを参考にこの方式が採用された。

軌道の上を動く台車と車体がアームでつながっている( Ys [waiz] さん撮影、Flickrより)

Ueno Zoo Monorail 上野懸垂線(上野モノレール) 40形

まだ日本のモノレールが試行錯誤していた時代だったので、50~60年代には他にも各地で様々な方式のモノレールが開業したが、短命に終わったものも少なくなかった。東京モノレール・多摩都市モノレール・湘南モノレールなど、都市交通として定着したモノレール路線は皆上野式とは異なる走行様式を採用したため、上野モノレールは全く互換性が無い。

湘南モノレール。同じ懸垂式でも軌道の形が上野モノレールと違うのがお分かりだろうか

湘南モノレール。同じ懸垂式でも軌道の形が上野モノレールと違うのがお分かりだろうか

後から開発されたモノレールが建設費や速度、乗り心地を諸々改良していった結果、日本最古の上野モノレールだけが孤立したシステムとなってしまった、というわけだ。結果的には実験要素が強すぎて、上野動物園の中を走るだけのアトラクション的な路線に落ち着いてしまった。

更新コストの高額さはこの特殊性がネックになって、ほぼゼロから車両を開発せねばならないためだが、わざわざ営業を休止して「ご意見を伺いながら検討する」という都交通局の告知に、ネット上では「廃止ありきではないか?」との憶測が広がっている。「本当に存続させるつもりなら、高コストでも車両新造を放置したりしない」という見方である。

上野の山を走って62年。土地柄、子どもが喜ぶ乗り物としても親しまれてきただけに、存続を願う声も少なくない様子だ。また前述の通り日本のモノレールのパイオニア的存在でもあるだけに、産業遺産としての価値を考えてほしいというつぶやきもあった。

19年11月からはモノレールに代わって電気バスの運行を開始するという。ネット上はモノレールの存続について悲観的な見方が強めだが、まだどちらに転ぶともいえない。実はこれまでにも車両更新の度に運休期間を設けており、また廃止を検討していたところに存続を願う声を受けて運行継続してきたこともある。

存続にせよ廃止やむなしにせよ、ご意見がある方は東京都にメッセージを送るのもいいかもしれない。

(Jタウンネット編集部 大宮高史)