被爆証言者・朗読者の市外派遣 100件達成へ 聴講者2万1000人 学校から需要多く

 被爆者が高齢化する中、被爆体験の継承を図ろうと、厚生労働省が本年度始めた、証言者などの長崎市外への派遣事業について、申し込みの窓口となっている国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市平野町)は、年度末までの派遣数が当初想定していた100件に達するとの見通しを明らかにした。聴講者は約2万1千人になる見込み。同館は「修学旅行の事前学習や、普段は平和学習に原爆が含まれていない学校からの需要が多かった。若者への継承は一定広がっているのでは」とみている。
 「家族・交流証言者」と「被爆体験を語り継ぐ 永遠(とわ)の会」の朗読ボランティアを市外に無料派遣する取り組み。証言者は高齢化した被爆者に代わり、被爆者の体験や思いを伝える。被爆2世や3世、一般市民らを対象に市が養成している。同祈念館が募集する朗読ボランティアは、館内に所蔵する被爆体験記を読み聞かせている。厚労省は本年度、広島でも同様の事業を始めた。
 長崎からの派遣は24日現在で87件。ほかに年度末までに13件の予約が入っている。内訳は証言者が64件、朗読者が36件。地域では九州が46件で最も多い。派遣先は小学校37、中学校33、高校10のほか、行政や民間主催の平和関連行事に派遣するケースもあるという。
 厚労省は本年度の派遣数を100件と想定していたが、現在も派遣の問い合わせがあっており、今後増える可能性があるという。2019年度は事業を拡充し、派遣予定数の上限を220件に定めている。
 同館は19年度分の派遣申し込みを受け付けている。証言者と朗読者への謝礼金と旅費は厚労省、会場費などの運営費は申込者が負担する。問い合わせは同館(電095・814・0055)。

兵庫県姫路市立四郷中での家族・交流証言者の講話=昨年4月(国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館提供)

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