いまのサッカー界に欠かせない存在となったスポーツディレクター。最近ではかつての名選手が就任するケースも増えてきた。
ここでは、『sportskeeda』による「現サッカー界におけるSD、トップ8」を見てみよう。
ミヒャエル・ツォルク(ドルトムント)
近年のドルトムントの成功において、大きな貢献をしてきた人物だ。
現役時代はドルトムント一筋にプレーしたツォルクは、ブンデスリーガやCLのタイトルを獲得した後に36歳で引退。その後、SDに就任すると現在まで在籍しており、2021年までの契約を結んでいる。
彼の在任期間において、チームは黄金期を経験。ブンデスやDFBポカールなどのタイトルを獲得したほか、ユルゲン・クロップやトーマス・トゥヘルら世界最高レベルの監督も引き入れた。
だが、ツォルクについて最も印象的なのは、選手売却のセンスだ。彼の戦略は、若い選手を育てて大舞台にいざなうというもの。
最もいい例は、今季大ブレイクを果たしたジェイドン・サンチョだ。
そして、ツォルクの戦略によって、近年のドルトムントは大金を得ている。直近の例が、チェルシーに5800万ポンド(80億円)で売却したクリスティアン・プリシッチである。その他、イルカイ・ギュンドーアン、ウスマヌ・デンベレなど多数。
2017年にはそのビジネスセンスに目をつけたアーセナルからヘッドハントを受けるも、ツォルクはBVB残留を決めた。
チキ・ベギリスタイン(マンチェスター・シティ)
かつてバルセロナで活躍した彼は、浦和レッズでプレーした後に現役を引退。2003年、バルサの会長になったジョアン・ラポルタのもとでSDの道に。
当時、4年もタイトルから遠ざかっていたバルサは混迷状態にあった。だが、彼の登用によって、クラブは完全に新しいレベルに到達する。
2008年にジョゼップ・グアルディオラをトップチームの監督に引き上げたのも、チキの功績だ。ラポルタ氏は「彼の起用は私が行ったなかで最高の決断だった」とすら述べた。
2010年、ラポルタ氏がバルサを去ると同時にチキもチームを後に。在任7年間で5度のリーガ制覇、2度のCL制覇を成し遂げた。
その後マンチェスター・シティ入りしたチキは2012年にペップを招聘する。その後は言うまでもないだろう。
ジュゼッペ・マロッタ(インテル)
2006年、カルチョポリによって降格となったユヴェントスはセリエBを戦うことに。1年でトップリーグに戻ってきたが、タイトル争いに絡めず苦戦するなど、非常に厳しい数年を過ごす。
チームは入れ替えが絶対的に必要になっていた。2010年5月、マロッタはスポーツ部門のCEOに着任。今から考えれば、ありうるなかで最高の動きだった。
初年度からチーム再建に着手し、実に14人の新戦力を補強。そして、2011年にはアントニオ・コンテを監督に指名、これもとてつもなく大きな決断だった。
コンテのコーチングスキルとマロッタのビジネスセンスが合わさり、ユーヴェは世界最高のチームのひとつになったのだ。
マロッタはフリーの選手を連れてくるセンスにも優れていた。ポール・ポグバにアンドレア・ピルロ。そして、アルトゥロ・ビダルも格安だった。
昨夏にもロナウドのユーヴェ入りを成し遂げたが、昨年末にインテルへ電撃移籍している。
モンチ(ローマ)
彼は現役時代のキャリアをセビージャに捧げたGKだった。2000年、チームが2部に降格すると、引退したモンチはSDに就任する。
仕事を始めるにあたり、首脳陣から2つのタスクを課された。カンテラの強化、そしてスペイン国外のスカウト部門の強化だ。
彼はそれを完璧にやり遂げる。在任中にディエゴ・カペル、ヘスス・ナバス、セルヒオ・ラモス、アルベルト・モレノら優秀なカンテラーノがトップに昇格。
だが、モンチの特別に優れた能力は、無名選手を安く獲得してスターに育てる手腕だ。そして、莫大な金額で売るのだ。
ダニ・アウヴェス、アドリアーノ、イヴァン・ラキティッチ、アレイシ・ビダルなど枚挙にいとまがない。
2017年にセビージャを離れ、イタリアに。彼は700名ものスカウト陣を擁するネットワークを持つとされている。
ラルフ・ラングニック(RBライプツィヒ)
かつてシュトゥットガルト、ハノーファー、シャルケ、ホッフェンハイムで監督を務めた人物。そして、近年のライプツィヒ躍進の立役者でもある。
2012年夏、ライプツィヒとレッドブル・ザルツブルクのSDに同時就任。だが、数か月後に後者での職を辞退し、前者に専念する。
ライプツィヒはわずか“9歳”とブンデスリーガで最も若いクラブだ。その9年間でドイツのエリートクラブへと成長を遂げた。今では欧州の舞台で戦うことも当たり前になってきた。
人材発掘に長けたラングニックのもと、ライプツィヒはブンデスで最も若いスカッドを揃えている。
彼の戦略は24歳以下の選手を買い、本物に育てるというもの。好例が、リヴァプールに5300万ユーロ(65億円)で売却したナビ・ケイタだ。
そして、もうひとつの素晴らしい功績はユリアン・ナーゲルスマン監督の招聘だ。ブンデス史上最も若い指揮官である彼は、来季ホッフェンハイムからライプツィヒに移籍することが決まっている。
そして、彼もまた若手育成の戦略を持っている人物だ。“ラングニック&ナーゲルスマン”のコンビは完璧に機能することだろう。
マイケル・エドワーズ(リヴァプール)
リヴァプールが移籍市場において再び競争力を持てた理由は彼にある。2016年11月、エドワーズはクラブ内で最も力を持つ役職のひとつに昇格した。
最近のマーケットにおけるリヴァプールの素晴らしい補強は彼の功績だ。ムハンマド・サラー、フィルヒル・ファン・ダイク、アリソンなどなど。
また、選手放出でも巧みな手腕を発揮。コウチーニョのバルサ移籍では、当初の移籍金だけで1.05億ポンド(146億円)を得ている。さらに各種の条項が満たされれば、1.42億ポンド(198億円)にもなる。
さらに、控え選手たちの売却額を下回る安価な額でジェルダン・シャキリのようなスターを獲得しており、レッズサポーターからの信頼は厚い。
アンドレア・ベルタ(アトレティコ・マドリー)
元銀行家のイタリア人。ジェノアやパルマなどで働いた後、2013年にアトレティコに着任。当初の役職はスカウトだった。
その後、テクニカルディレクターを4年務めた。そして、2017年からはスポーツディレクターに。
かつては2部落ちも経験したアトレティコがリーガの強豪に返り咲いたのは、ディエゴ・シメオネ監督だけでなく彼によるところもある。
ベルタは本物の移籍達人だ。ヤン・オブラクやアントワーヌ・グリーズマンらをチームに引き入れてきた。昨夏もリヴァプールやアーセナルらを出し抜き、フランス代表トマ・レマールを獲得している。
その卓越した手腕を評価されて昨夏にはマンチェスター・ユナイテッドから狙われたベルタ。ユナイテッド史上初のディレクター職として誘われたが、それを固辞してチーム残留を決めた。
ルイス・カンポス(リール)
54歳のポルトガル人。2014~2016年にはモナコで手腕を発揮した彼は、才能発掘を高く評価されている。
その当時のカンポスの戦略は明確だった。「安く買う」だ。
ファビーニョ、ティエムエ・バカヨコ、ベルナルド・シウヴァ、トマ・レマールらを獲得。そして、キリアン・エムバペをトップチームに引き上げた。
カンポスはモナコのリーグアン制覇、CLでの準決勝進出にも貢献している。2017年以降、モナコは選手たちを莫大な額で売却。
その時、カンポスはもはやチームにいなかったが、彼がその選手たちを獲得した人物だということを忘れることはできない。
2017年からはリールで働いているが、その戦略は変わっていない。その好例は、アーセナルなどから狙われる23歳のFWニコラ・ペペの獲得だ。