「被災地ボランティア」2度目の体験 変わるニーズ 岡山・真備

西日本豪雨で被災した山口貴之さんの自宅でボランティア活動する共同通信記者=2018年12月27日、岡山県倉敷市真備町地区

 西日本豪雨で浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区は、年明け以降もボランティアによる復旧作業が続いている。ピーク時は1日2千人を超えたが、今は100人に満たない日も。住宅のリフォームに向けた清掃などにニーズは変わりつつある。被災地ではどのようなボランティアが求められているのか。共同通信記者(23)が昨年12月下旬に現地で参加した。

 午前9時すぎ、真備町地区のボランティアセンターで受け付けを済ませた。業者のような技術も体力もない分、不安が募る。プレハブの待機部屋でスタッフから「被災者への配慮を忘れないように」と伝えられ、犠牲者に黙とうを捧げた。

 待機部屋には「あの人の家の進み具合どうなってる?」という声が飛び交い、参加者同士の顔見知りも多いように感じた。平日は毎日参加しているという男性は「ボランティアって、そんなに構えるものでもないと思う」と明るく笑った。

 男女5人で班を組む。ほかの参加者の車で出発し、5分ほどで依頼先に到着。被災直後の昨年7月にもボランティアを体験したが、待ち時間はずっと短くなっていた。

 満員のバスに乗り換え、廃棄物がびっしりと両脇に積み上げられた道路を走り、「どこの県から来られたんですか」と知らない人同士が話す光景もなくなっていた。

 依頼者の真備町下二万の山口貴之さん(75)の自宅は浸水で全壊判定を受けた。1階は壁や床がない骨組みとなり、2階で暮らし続けている。依頼はリフォームに備えた清掃だ。いったんはボランティアの作業に区切りを付けていたが、12月からもう一度依頼するようになったという。

 昨年7月の現場では厳しい暑さの中、水浸しになった畳や布団、本棚などを家の外に運び出した。主に力仕事だったが、今回は骨組みに付着した乾いた泥をヘラで取り除き、ブラシをかける作業だ。

 手足の先が冷え、マスクをしていてもほこりっぽさを感じた。暑さはなくなったが、体力は人それぞれ。寒くてほこりっぽい空間での長時間作業に「もう少し休みます」と疲れを見せた班員の女性もいた。少しでも体調が良くないと感じたら「休みたい」ときちんと申し出る勇気も大切だ。

 30分の作業と10分の休憩を繰り返し、約5時間で終了。「作業以外の時間が寒いよね」と皆が体を震わせる。岡山市の楠橋恵里奈さん(38)は「自分でもできる作業で安心したが、1人ではきっと終わらない」と話した。

 何度もボランティアの手を借りてきた山口さんは「これで大工さんにお願いできる。最初は手の付けようがなかったが、ボランティアのおかげでここまでやってくることができた」と喜んだ。

 昨年7月から活動している倉敷市の看護師、中西麻由子さん(43)は「作業が終わりに近づくとさみしい気持ちもある。たくさんの人との出会いがあって楽しい」と笑顔を見せた。 

 倉敷市社会福祉協議会によると、復旧状況に個人差が出ており、作業には多様性が広がっている。拭き掃除など比較的体力を必要としない作業も増えていることから、女性も参加しやすくなっているという。

 一旦ボランティア作業を終了した家もリフォームの進み具合などによっては再度ボランティアを呼ぶケースも多い。

 ボランティアセンターでは、作業を終えた人たちに温かいおしぼりや豚汁が振る舞われ、「ボランティア納めだね」「2019年も頑張ろう」といった声が上がっていた。(共同通信=岡山支局・寺田佳代)

作業から戻ってきたボランティアに豚汁をふるまう人たち=2018年12月27日、岡山県倉敷市真備町地区

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