一回り

 年の離れた2人が年齢差を話題にするとき、「あら、おんなじ亥(い)年? だったら一回り違うね」などと言ったりする。同じ干支(えと)がまた巡ってくる12年の歳月を、よく「一回り」と呼ぶ▲前の亥年に発覚した「消えた年金記録」問題の教訓がいま、一回りして府省庁に突き付けられている。厚生労働省の勤労統計の不正を受けて、国の公的統計のうち特に重要な「基幹統計」を調べてみたら、勤労統計を含む22の統計で不適切な処理が見つかった▲「消えた年金」では、加入者が保険料を納めたのに、当時の社会保険庁に記録がなかった。国の検証委員会の報告書にこうある。記録を正確に作成し、管理するという「組織全体の使命感、責任感が決定的に欠如」していた、と▲指摘はそのまま当てはまる。勤労統計の不正では、定められたのとは違うと気付いた担当者もいたし、報告を受けた幹部もいた。なのに放置されていた▲問題を「放っておいた」のであって、組織ぐるみで「隠した」のではない-という厚労省の特別監察委の報告は難じられ、“身内”による聴取のずさんさも批判を集める▲12年前と同じく、今年は参院選がある。政権側としては、前の亥年に味わった自民党惨敗の「一回り」だけは避けたいはずだが、目下のところ、幕を引くにも引きようがない。(徹)

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