【選抜高校野球】桐蔭元コーチも新たな船出、日ハムスカウトに

 16年ぶりとなる高校野球の選抜甲子園出場を25日に決めた桐蔭学園高。「名門のプライドを持って、全国上位を目指して戦ってほしい」と歓喜に沸く後輩たちを激励しつつ、自らも“第三の人生”を歩み出す野球部OBがいる。16年前にコーチとして甲子園の土を踏んだ同校職員の坂本晃一さん(51)だ。今月末で20年勤めた同校を退職し、プロ野球・日本ハムのスカウトに転身する。

 「平成が終わり新しい元号になる年に16年ぶりに甲子園に出て、自分も新しいことにチャレンジできる。ワクワク感がありますね」

 坂本さんは桐蔭野球部の17期生。後に慶大で東京六大学リーグ通算31勝をマークした左腕・志村亮さんと小中高でバッテリーを組んだが、3回戦まで進んだ1984年夏の甲子園ではベンチ入りできなかった。

 大学卒業後は輸入車ディーラーのヤナセで10年間勤務し、米国車のトップセールスマンとなった。それでも野球への思いは断ち難く、当時の土屋恵三郎監督(現星槎国際高湘南)に直訴し、母校に戻った。中学生のスカウトや選手育成で力を発揮し、ロッテ・鈴木大地選手や楽天・茂木栄五郎選手、西武・斉藤大将投手らを育てた。2013年にコーチを退任した後も、昨年はボランティアで土屋監督が率いる星槎国際湘南野球部の指導に携わった。

 プロ球団のスカウトは大半が元プロ選手だ。昨秋、旧知の日本ハム・大渕隆スカウト部長から突然「仲間に加わってほしい」と誘われ戸惑ったというが、「プロの目ばかりだと見方が偏る。桐蔭での経験で将来伸びる選手を熟知している」と口説いた大渕部長も、一般企業や高校教諭を経験した転身組。土屋監督からも「挑戦してこい」と背中を押され決断したという。

 同球団はかつて光明相模原高で監督を務めた本村幸雄選手教育ディレクターが若手を手厚く指導し、大谷翔平投手(エンゼルス)やダルビッシュ有投手(カブス)をはじめ、中田翔選手、清宮幸太郎選手ら多くの高卒選手を育成してきた。球界の常識にとらわれずにチャレンジする土壌があり、活躍の場は多そうだ。

 後輩たちが出場する選抜甲子園を前に、2月から同球団の関東地区担当スカウトとして「第二の大谷」を発掘する日々が始まる。栗山英樹監督から直々に激励され、身が引き締まる思いという坂本さんは「元選手のスカウトとは違った目線で勝負したい」と新たな一歩を踏み出す。

2月から日本ハムのスカウトに転身する坂本さん=横浜市青葉区の桐蔭学園高

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