<社説>勤労統計不正問題報告書 組織守るお手盛り調査だ

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 毎月勤労統計の不正問題で、厚生労働省は監察委員会がまとめた報告書を公表した。ところが中身を見ると、組織的な関与や隠蔽(いんぺい)を否定する言葉ばかりが並ぶ。その一方で不正を始めた動機や背景についての実態把握は極めて不十分だ。真相解明より、沈静化だけを図ろうとしたとしか思えない。 報告書は省内の監察チームと監察委で計延べ69人を聴取したとしていたが、実際に監察委が聴取した実人数は31人だった。うち11人は監察委が同席せず、内部職員だけで聴取していた。

 さらに報告書のたたき台となる文案は厚労省職員が作成していた。組織の責任が問われることがないようにした「お手盛り調査」だと言われても仕方ない。

 報告書の公表後、与野党から厳しい追及を受け、厚労省は再調査を実施することを表明した。中立性に大きな疑義が出ているのだから当然だ。再び拙速に調査をまとめてアリバイづくりの上塗りをすることは許されない。徹底した真相解明を図る必要がある。

 毎月勤労統計の不正調査は、企業の賃金や労働時間を把握する厚生労働省の統計で不十分な調査が横行していた問題だ。全調査が必要な東京都内の従業員500人以上の事業所約1400事業所のうち、2004年からは3分の1程度しか調べていない。

 このため集計後の平均給与額が実態よりも低くなり、統計を基に算出する保険制度の金額も低くなった。延べ約2015万人に過小支給が発生し、追加支給の総額は約560億円に上る。しかし住所が分からない人が延べ1千万人以上いるとみられている。半数近くが支給を受けられない可能性がある。

 さらに追加支給をするための事務費が235億円かかるという。調査に不正がなければこれほど膨大な事務費は生じることはなかった。税金をどぶに捨てるような行為ではないか。

 調査報告書では一部の担当職員が不正を認識しながら、誰も声を上げず、漫然と前例踏襲を続けていた実態が明らかになっている。「不正な手法を変えた方がよいと思ったが、総務省の統計委員会にかけると問題があると思った」と職員が述べている。

 担当部局長が不正調査を容認するマニュアルを決済していたが14年に該当部分が削除された。この年に政府が勤労統計を含む基幹統計をチェックする計画を閣議決定した。

 不正発覚を恐れたとしか思えない。それにもかかわらず、担当課長は「隠す意図は全くなかった」と否定した。報告書が「組織的な隠蔽は認められない」と結論付けても誰が納得するだろうか。

 今回の不正で発覚したのは、霞が関全体に巣食う国民不在の怠惰な仕事を支える官僚組織の病巣だ。その構造を変えなければ、再び同じことが起こるだろう。