北朝鮮のレイプ殺人犯、実の息子の通報で極刑に

北朝鮮北東部の鉱山で、女性のコチェビ(ストリート・チルドレン)に性的暴行を行った上で、殺害した鉱山労働者が公開裁判で無期懲役刑に処せられた。

現地の情報筋によると、被告は40代半ばの男性A。咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)の検徳(コムドク)鉱業連合企業所で坑長を務めていた。坑長とは、鉱山の坑道の管理責任者で、安全管理などを担っている。

息子が目撃した犯行

Aは非常に評判のよい人物だっただけに、地元では衝撃が広がり、彼の本性を知った地域住民は、怒りに震えている。事件の顛末は次のようなものだ。

「Aは職場では労働者に親切で、党の活動も熱心に行っていた。妻とは不仲で出ていかれてしまったが、男手一つで息子を育てていた」(情報筋)

2016年のある日、Aは駅前に行ってコチェビの少女に声をかけた。妻に出ていかれて困っていたのだろう。家事をさせるのが目的だった。そして住み込みで働き始めた少女に、Aはいつしか不穏な感情を抱くようになった。

Aはやがて、少女が逃げられないように監禁するようになり、ついには性的暴行に及んだ上、無残にも殺害した。

Aは少女の遺体を、キムチを入れた甕(かめ)の下に埋めた。そして同様の手口で、昨年下半期までに計3人の女性を殺害した。

情報筋によると、Aの自宅は住宅地から少し離れたところにあったため、Aが女性を監禁、殺害したことに地域住民は気づかなかったという。

事件に気がついたのは、Aの15歳になる息子だった。

自宅で家事仕事をしていた女性らが、相次いで何も言わずに姿を消したことを不審に思っていた彼は、自らの父親が人を殺めるのを目撃してしまった。息子は鉱山の保安署(交番)に通報して、事件が明るみに出た。

Aに対する公開裁判は昨年12月24日、企業所の前庭で多くの住民が見守る中で行われ、無期懲役刑が言い渡された。

家族や家を失い、路上で暮らしているコチェビは、北朝鮮で最も弱い立場に置かれた存在と言えよう。中でも女性は、常に犯罪の危険にさらされている。

この日の裁判では、鉱山で採掘された鉛や亜鉛を密売した10人の労働者も裁かれ、労働鍛錬刑6ヶ月から教化刑2年の判決が言い渡された。いずれも懲役刑だ。

この鉱山では昨年11月にも、鉱山労働者を含む30人を対象にした公開裁判が行われるなど、経済制裁による不況がもたらす治安の悪化、不正行為の蔓延が深刻な状況に達している。

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