真冬の脅威

 気が早いけれど、この時期に春の話題を見聞きすると、心弾む感じがする。先ごろ気象予報の会社ウェザーマップが「さくら開花予想」を発表した。全国では、今年の開花は平年よりもやや早い所が多いという▲長崎は開花が3月24日、満開が4月2日と予想され、平年並みらしい。2カ月後には、日ごと花開くさまに見入っているだろうか▲と、春の訪れについ思いを巡らすのは、寒さが身にしみる頃だというのに、それらしい底冷えもなく今冬を過ごしているからかもしれない。暖冬のまま、気が付けば春がやって来るかのように想像してしまうのだが▲実のところ、列島はむしろ真冬の脅威にさらされている。厚生労働省によると、今月20日までの1週間で、1医療機関当たりのインフルエンザ患者数は、過去最多だった昨冬に迫っていて、健康を脅かす“厳冬”のさなかにある▲施設のお年寄りが集団感染し、亡くなる例も全国で相次ぐ。流行は加速する勢いらしい。こまめな手洗いなどで、どうぞ細心のご注意を▲五行歌の秀歌集にあった。〈普通の元気って/宝ものなんだねと/しみじみ 娘が言う/インフルエンザが残していった/とても好(よ)い言葉〉。健康のありがたさをかみしめるにしても、春に思いを巡らすにしても、まずはこの厳しい冬を超えなくては。(徹)

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