キーワードは“夢” ロサンゼルスで暮らす人々-vol.772

By Yukiko Sumi

髙野 力哉 |Rikiya Takano プロデューサー/ アートディレクター

 「夢は大きく、心は優しく」。映画プロデューサー/アートディレクターの髙野力哉さんが心の中に大切にしまっていることばだ。小学生時代、洋画好きの父の影響もあって興味は自然に映画へと向いていった。唯一観ていた邦画が『釣りバカ日誌』シリーズ。テレビで偶然観てから、主演俳優の西田敏行さんの作品を鑑賞し始め、気づけばファンレターを何通も送るほどの大ファンになっていたという。ある日、一通の封書が髙野さん宛に届いた。中に入っていたのは冒頭のことばが書かれた西田さんからの直筆サイン色紙。「難しいことばではなかったし、素直に心に響いた」というこのことばを、これまでの人生でずっと励みにしてきた。

小学生時代、西田敏行さんから送られてきたという色紙に書かれた「夢は大きく、心は優しく」ということばは高野さんの人生のモットーとなっている

 映画に携わりたいという気持ちは小学生から一貫して変わっていない。初めての映画制作は小学校の授業の一環で監督を務めた作品だった。以降、学園祭用の作品に役者として出演したり、脚本を書いたり編集をしたりと、さまざまな形で毎年1本は映画作りをするようになった。将来の道が決まったのは、中学校3年生のとき。文化祭で17分間の米国ドラマのパロディを制作した。監督、脚本、編集などほぼすべてをゼロから自分の手で行い、上映が終わった瞬間に大きな達成感を感じたという。「あのときに、企画を立て、話し合いを重ねて計画を詰めていくことにやりがいを感じる自分には制作が向いていると気づいた」。以来、ずっと一つの夢を追い続ける。

映画プロデューサー/アートディレクターとして活躍する髙野力哉さん。「いつかは渡辺謙さんとハリウッドで映画を撮りたい」と話す(ウェブサイトはrikiya-takano-2414. squarespace.com)

 ロサンゼルスへやってきたのは2015年のこと。ハリウッド映画『ラストサムライ』を観て衝撃を受け、俳優・渡辺謙さんの活躍を見て「日本人でも米国で活躍できる可能性があるなら、本場のハリウッドで挑戦したい」という思いが芽生えた。LAではCSUノースリッジ校で映画制作を専攻し、アートディレクターとして参加した卒業制作作品『アマール(Amal)』は大学代表作に選出された。現在は制作会社に所属するかたわら、フリーランスとしても活躍。TVシリーズ『Musashi』やNetflixのTVショー『Hyperdrive』など複数のプロジェクトに携わっている。

 「撮りたいのはノンフィクション映画。実話を元にしている作品は人生を語るものが多く、観る人は自分の人生を照らし合わせる。一本の映画で人生の選択肢を与えるような作品を作りたい。観た人がメッセージを感じてくれ、考えさせることができればと思う」。キーワードは〝夢〟。自身が西田さん、渡辺さんからインスパイアされたように、だれかにとって夢の実現や将来につながる何か、あるいは勇気、元気を与えたい。髙野さん自身の夢は、そんな作品をプロデュースしていくことである。

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