検証 佐世保市政 朝長市長の3期(1)<人口減少> 広域統率 問われる手腕

 4月21日投開票の佐世保市長選まで3カ月となった。現職の朝長則男氏のほかに出馬の動きは見えない。前回に続き無投票の可能性もあるが、人口や経済、基地の問題など課題は山積する。現市政の成果と課題を検証した。

 佐世保市を中心に長崎、佐賀両県の近隣11市町でつくる連携中枢都市圏「西九州させぼ広域都市圏」。新年度のスタートに向けた協約締結式が12日に市内で開かれ、参加する市町長が一堂に会した。中心市の市長としてあいさつに立った朝長則男(69)は力を込めて言った。「確かな一歩を踏み出せた」

 3期目の朝長が手掛けた主な施策に、2016年4月の中核市移行が挙げられる。当時から国が構想する連携中枢都市圏の形成に意欲を示し、人口減少や少子高齢化社会に対応した広域の枠組みが必要だと考えてきた。

 都市圏は中心市と周辺自治体が共通の事業計画を定め、経済成長や住民サービスの向上などで連携する。大都市への人口流出を抑える「ダム機能」の役割が期待されるが、人口問題は佐世保市でも深刻な状況にある。推計人口は、市町村合併が一段落した10年以降も減少傾向で、昨年12月時点で25万人を割り込んだ。総務省の人口移動報告によると、市外への転出超過は14年から全国市町村のワースト20位内を脱出できず、毎年千人規模で人口が流出している。

 都市圏形成はこうした状況の打開策となり得るが、早くも“ほころび”が出ている。佐世保市に隣接する北松佐々町は、昨年12月の町議会で都市圏参加の理解が得られず、土壇場で関連議案を否決し、離脱が決まった。総務省によると、全国では28の都市圏が形成されているが、させぼ広域都市圏のように中心部の自治体が離脱した例はない。

 佐賀県の武雄、嬉野両市も参加予定だったが、両市とも「連携する事業がない」として昨年夏に離脱を表明。両市には22年に暫定開業する九州新幹線長崎ルートの新駅が建設され、都市圏の玄関口の役割が期待されただけに、関係者の落胆は大きかった。

 都市圏のビジョンは5年ごとに改定するが、佐世保市議会には今後も離脱する市町が出るのではないかという懸念がある。「佐世保市長に求められるのは佐賀県を含めた広域のリーダーシップだ。これが現時点の求心力なのだろう」。ある重鎮市議は指摘する。

 連携の協約締結式には県知事時代に「平成の大合併」を進めた参院議員の金子原二郎(74)も登壇。市町村をまとめる苦労を交えながらこう述べた。

 「今後、連携がうまくまとまるかどうかは佐世保市次第だ。相当な手腕が問われる」

 =文中敬称略=

佐世保市の推計人口と転出超過数の推移

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