<金口木舌>私は褐色

©株式会社琉球新報社

 手塚治虫さんが亡くなって2月で30年になる。新しい全集も出ており、「鉄腕アトム」や「火の鳥」などの名作を今も手軽に読める。古典であり書店の本棚を埋める現役の作品だ▼作品集の末尾に「読者の皆様へ」と題した一文が載っているものがある。「本書にはさまざまな外国人が漫画的にディフォルメされた形で登場しています」と記し、読者の了解を求めている。外国人差別の問題が絡んでいる

▼古代から未来まで時空を超え、さまざまな物語を生み出した手塚さんでも昭和という時代の限界とは無縁ではない。漫画の神様に差別意識がなくても、作品は現代の人権意識のフィルターにかけられる

▼テニス全豪オープンを制した大坂なおみ選手が登場する食品会社の広告動画を巡る騒動も考えさせられる。肌の色が実際より白く描かれていると議論が起き、「ホワイトウオッシュ」(白人化)に当たるとの批判が上がった

▼食品会社は大坂選手に詫(わ)び「今後は多様性の問題により配慮したい」と釈明した。熱戦の最中、「私が褐色なのは明白」「次に私を描く時には私にも話してほしい」と語ったアスリートの言葉には痛切な思いがこもる

▼誇張したり、色を薄めたりする表現は時として人を傷つける。色黒、太い眉、毛深いというウチナーンチュへのレッテル張りもその類いかもしれない。「多様性の尊重」の難しさを実感する。