ロシア、北朝鮮に原発建設秘密提案 半島でのプレゼンス拡大狙う

By 太田清

 

2018年5月31日、ロシアのラブロフ外相(右)と握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(タス=共同)

 過去にも北朝鮮核問題を巡る6カ国協議などを通じ、朝鮮半島でのプレゼンスを拡大しようと躍起となってきたロシアだが、ここにきて同国による新たな攻勢が浮かび上がってきた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は30日までに、ロシアが昨年10月、米国との核・ミサイル開発を巡る合意が暗礁に乗り上げた北朝鮮に対し、核兵器と弾道ミサイルの解体を条件に、同国での原子力発電所建設を秘密裏に持ちかけたと報じた。複数の米高官の話として伝えた。 

 ロシア側の提案によると、原発の建設運営はロシアが行い、原子炉から出る生成物は核兵器製造に使用されないようロシアに持ち帰ることも条件としたという。提案がなお両国間で交渉中であるのかどうかや、2回目の首脳会議を模索する米朝の協議に影響を与えたかどうかは不明だとしている。 

 同紙はこうした提案は、ロシアが朝鮮半島に経済的権益を確保することを警戒する米国や中国を動揺させることになると指摘、両国の理解は得られないとの見通しを示した。 

 北朝鮮の核開発凍結と引き換えの支援については、1994年に米朝間で軽水炉や重油を提供する「枠組み合意」が成立したものの、その後の北朝鮮による核開発継続疑惑などで破たんした。 

 ロシアの提案は半島での同国の影響力、経済的権益を拡大する狙いがあるのは明らかだが、ロシア問題に関与している外交官の一人は同紙に対し、ロシアは半島での緊張緩和に貢献することにより、クリミア併合後の欧米の制裁解除にも期待している点を強調した。 (共同通信=太田清)

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