「変化」を語る

 不運ばっかりの人生で、やけっぱちの松子はただ一人、アイドルグループ「光GENJI」のメンバーには40代にして夢中になり、何十枚ものファンレターを送る。映画「嫌われ松子の一生」(2006年公開)に、どことなく切ない一場面がある▲来る日も来る日も、何年も何年も、ただひたすら返事を待つ。昭和の末ごろに人気絶頂だったそのアイドルは、中谷美紀さんが演じる松子の中でいつになっても変わることなく、若く、まぶしい存在であり続ける▲そんな「不変のアイドル」ではありません-という宣言に聞こえる。来年末で活動休止すると発表した人気グループ「嵐」はもう20年もの間、同じメンバーで活動してきた。年は30代半ば、後半になっている▲歌って踊る。芝居も司会もできる。報道番組にも出る。親しみやすさがある。幅の広さがファン層を広げてきたというのだが▲アイドルであり続けることに重圧もあったらしい。いつ、どんな形で区切りをつけるか。活動に幅ができて「アイドル寿命」が延びてこそ惑いもあったのだろう。と、アイドル論を語る含蓄もない身ながら思う▲「不変」を求められたのが昔のアイドルだとしたら、自ら「変化」を語るのが今のそれだろうか。「大人の決断」をするアイドル-昔はなかった言い回しが浮かぶ。(徹)

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