議員の実情 2019 統一地方選アンケート(7)<定年制> 経験か時代の流れか自問

 犯罪者のままで終わりたくなかった。

 2002年の知事選に絡み、自民党長崎県連と建設業者を巡る「政治とカネ」の問題に捜査のメスが入った違法献金事件。元県連幹事長の浅田五郎は03年、公職選挙法違反などの容疑で長崎地検に逮捕された。懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決。県議会議長や国政進出を夢見たまま、政治の表舞台から消えた。

 不完全燃焼だった。逮捕直前の県議辞職から約8年後の11年春、「市長が市民の声を聞かなくなっている。放っておけない」と、かつて務めた長崎市議に立候補。73歳で政界復帰した。

 今、浅田は81歳。今春の市議選で4選を目指す。議員の世代交代を促すため、導入している政党もある「定年制」について、浅田は「有権者が選ぶのであって、制度で上限を決めるのはおかしい」と否定的だ。

 こうした意見は浅田に限ったことではない。議員アンケートで「地方議員の定年制が必要か」と尋ねたところ、「どちらかといえば」を含め反対派が計56%を占めた。「若いから働けるわけではない」(県議)、「高齢者の知恵、経験も議会に必要だと思う」(西彼長与町議)などが理由だ。

 賛成派は計35%。「新旧交代で議会にも柔軟な考え方が生まれる」(県議)、「世代交代を促進する意味で、検討されてもいいのでは」(長崎市議)などの意見が上がった。

 「定年制」とともに、議員の在り方を巡って議論される「議員定数」についても聞いた。「所属する議会の議員定数は適正と思うか」の質問に、「どちらかといえば」を含め、計62%が「思う」と回答。行政をチェックし、住民の声を行政にぶつけるといった議会の役割を果たすため-との意見が目立つ。否定派の計31%の中にも同様の主張で「増やすべきだ」とする議員もおり、多くが現状維持か、今以上の定数が必要と考えていることが分かる。

 だが、地方議員のなり手不足もあり、議会によっては定数維持さえ難しくなってきているのも事実だ。実際、なり手不足を一因に、県内議員の61%が60代以上。70代超は22%いる。片や20代、30代は計3%。いびつな年代構成は否めず、そこでの議論が時代の流れに沿っているのか疑問を持つ議員も少なくない。

 大村市議の村崎浩史(38)もその一人。恋愛や結婚、出産など価値観が多様化する中で、長老議員のかつての感覚や経験が議論の幅を利かせているように感じる。「議会として市民が望む施策を提案できているかどうか…」。自問が続く。

 一方で、こんな指摘も上がる。壱岐市議の音嶋正吾(63)は言う。「議員に年齢は関係ない。有権者が若手に期待しながら新旧交代が進まないのは、若手が現場に足を運び、住民との信頼関係を築けていないからだ」

 =文中敬称略=

 ■調査方法■ 長崎新聞社が長崎県内全ての地方議会(長崎県議会、13市議会、8町議会)の全議員435人(当時)を対象に実施した。昨年10月末からアンケート用紙(回答は選択肢と自由記述)を配布し、同12月中旬までに回収。403人から回答(回収率92.6%)を得た。

定年制は必要?
定年制を設けることについては議員の56%が否定的だった=県議会議場

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