【MLB】FAの目玉がなぜ…ハーパー、マチャドとの契約に「あらゆる専門家が否定的」!?

去就が注目されるブライス・ハーパー(左)とマニー・マチャド【写真:Getty Images】

昨年から続くFA市場の“氷河期”、目玉のハーパー&マチャドも決まらず

 開幕まで2か月を切り、ストーブリーグもいよいよ佳境に入っているメジャーリーグ。ところが、今オフのFA市場で最大の目玉選手といわれたブライス・ハーパー外野手とマニー・マチャド内野手が未だに所属球団が決まっていない。この事実に関して、ニューヨーク地元紙「デイリー・ニュース」は、「マチャドのヤンキース入りは『絶対にない』とは言い切れないが、ヤンキースの狙いは他にある」と題した記事を掲載。ストーブリーグ開幕前にマチャド獲得の筆頭候補と目されていたヤンキースが、獲得に動いていない理由を分析している。

 過去にトレードやFAでアレックス・ロドリゲスやジェイソン・ジアンビといった超大物選手を獲得してきた“悪の帝国”ヤンキース。しかし、記事では「マチャドや代理人のダン・ロザノに対して現時点では正式なオファーをしていない」と言及。マチャドに届いた現時点での最高のオファーは「ホワイトソックスが提示した、7~8年で1億7500万~2億5000万ドル(約191億~273億円)」だという。

 さらに、記事では「マチャドが求めていると言われている10年3億ドル(約328億円)の契約からは大きく離れている。野手として最高額の契約(13年総額3億2500万ドル=約355億3000万円)を得たジャンカルロ・スタントンは、ヤンキースにトレードされ、(ヤンキースが)年俸の大部分を負担している状況だ」と指摘。昨オフから、どの球団も超大型契約は避ける傾向にある。

 ヤンキースの外野陣はアーロン・ジャッジ、アーロン・ヒックス、スタントンに加え、ベテランのブレッド・ガードナーと粒ぞろいであり、もう1人の目玉であるハーパー獲得は明らかな余剰戦力を生み出す。ただ、内野陣はオフに正遊撃手のディディ・グレゴリウスがトミー・ジョン手術を受けた影響で来季中盤まで不在、かつ三塁手は守備力に不安のあるアンドゥハーであるため、この2点をまとめて解決できるマチャド獲得に動くだろうというのが昨季終了直後の大半の識者の見解だった。しかし、メジャーでも屈指の資金力を誇る超名門球団は積極的な動きを見せることなく、ここまで来ている。

 では、ヤンキースはこのままマチャドの獲得を見送る方針なのだろうか。記事では、静観を続けるヤンキースの狙いとして2つの可能性があると分析している。

リスクが大きい超大型契約「彼らに対するマーケットは明らかに変化してきている」

 1つ目は、ヤンキースが“より安価”でマチャドを獲得するという可能性だ。「スプリングトレーニングが近づいても沈黙を続けるヤンキースにしびれを切らしたマチャドならばバーゲン価格で獲得できる」という思惑が絡んでいると推察。実際に、昨オフはレッドソックスがJ.D.マルティネス外野手を同様の手法で安価で獲得。マルティネスはMVP級の活躍をみせ、ワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。

 2つ目は、ヤンキースがマチャド獲得よりも他の先発投手獲得を優先しているから、というもの。オフにトレードでマリナーズからジェームズ・パクストンを獲得し、FAとなっていたJA・ハップとCC・サバシアとの再契約をまとめたヤンキース。ルイス・セベリーノと田中将大も合わせ、5人と先発ローテーションの数は揃っている。だが、記事では「キャッシュマンGMは、サバシアのバックアップのため6人目の先発投手を獲得して補強終了となるのではないか。もちろん(マチャド獲得の可能性が)ないわけではないとはいえないが」という関係者の声を紹介。手術明けでかつ38歳を迎えるサバシアにはコンディション面での不安がつきまとう。マチャドよりも先発を厚くしたい、というのがヤンキースの思惑ではないかというのだ。

 さらに同紙は、ヤンキースがすでに2019年の贅沢税の制限を700万ドル(約7億6500万円)超過していると指摘。「昨シーズン100勝を記録したロースターに加えてパクストン、トロイ・トロウィツキー、DJ・ラメイヒュー、アダム・オッタビーノを補強、ハップ、ザック・ブリットンの再契約に成功しているため、あと1人の先発投手を加えるだけでここ2、3年はまだまだチャンスがある」と、マチャド獲得が水泡に帰しても現時点で“必要十分”の補強はできていると評価している。

 ここ2年にわたって続いているFA戦線の“スロー化”。昨年もダルビッシュ、アリエッタ、マルティネスといった大物FA選手でさえ1月中旬を過ぎても契約が決まらなかった。記事によると、関係者は「彼らに対するマーケットは明らかに変化してきている。あらゆる専門家も(マチャドやハーパーとの契約に)否定的な考えである」と話しているという。マチャドとハーパーには“3億ドル”級の契約は見合っていないのでは、とする見方が強いようだ。そして、関係者は「残念なことだが、FAは彼らだけではない。まだ契約を結んでいない選手が、100人もいるのだから」とも話しているという。大物の動向が他のFA選手にも大きな影響を及ぼしていることは確かだ。

 最近のFA市場では天文学的な数字での契約が多発している。その結果、契約後に“年俸に見合った”働きができていない選手が目立つようになり、球団は大型契約そのものに二の足を踏んでいる。アルバート・プホルス(2012年から10年総額2億4000万ドル=約262億円でエンゼルスと契約)やジェイソン・ヘイワード(2016年から8年総額1億8400万ドル=約201億円でカブスと契約)、クリス・デービス(2016年から7年総額1億6100万ドル=約176億円でオリオールズと再契約)などなど……。かなりの重荷になる“リスク”があるため、球団は敬遠しているのだ。

 記事は「最後には球団がマチャドやハーパーへのオファーの額を上げることになる可能性もあるが、それ以上に高い確率で選手と代理人の期待よりも低い額での契約に甘んじるだろう」と締められている。果たしてどの程度の契約を結ぶのか、今後数年間にわたって契約の“基準”になり得るだけに、高い注目を集めている。(Full-Count編集部)

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