【平成の長崎】産業革命遺産の推薦決定 世界遺産へ 平成25(2013)年

 菅義偉官房長官は9月17日の会見で、長崎県の端島炭坑(軍艦島)など全国8県に構成資産がある「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」を、本年度に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産へ推薦すると発表した。三菱重工長崎造船所の第三船渠(せんきょ)など稼働中の資産を含む枠組みでの国内初の推薦。2,015年の世界遺産委員会で登録の可否が審査される見通し。
 産業革命遺産は、内閣官房の有識者会議が推薦していた。一方、長崎県が15年登録を目指し、文化庁の文化審議会が推していた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の推薦は来年度以降となる。文化遺産への各国の推薦枠は年1件で、両遺産の競合を受けて政府内で調整していた。
 菅長官は両遺産について「甲乙つけがたい」とした上で、産業革命遺産を選んだ理由を(1)日本がものづくり大国となる基礎をつくった歴史を物語る(2)岩手県釜石市の資産を含み、国の最優先課題である震災被災地復興にも大きく貢献(3)稼働中の工業関連施設の登録は世界に例がなく、文化遺産保全の新たなモデルを提示する-などと説明した。
 産業革命遺産について、政府は9月中に推薦書(暫定版)をユネスコに提出。来年夏にも国際記念物遺跡会議(イコモス)が現地調査に入る。「イコモスの審査に耐えられるのか」との記者の質問に、長官は「有識者会議でも世界遺産登録に向け推進するに足り得る水準と決定した」と答えた。
 産業革命遺産は、文化財保護法で保全が難しい稼働中の資産を含むため、昨年の閣議決定に基づき設置された有識者会議が価値や保全策を審議していた。
 一方、下村博文文部科学相は記者会見で、教会群に関し「来年度には確実に推薦できると考えている」と述べた。
(平成25年9月18日付長崎新聞より)
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世界遺産登録を目指す端島(通称・軍艦島)=長崎市沖

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