うっかり金正恩氏の「大事な女性」を売り飛ばしたブローカーの行く末

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北朝鮮で横行している女性の人身売買。女性を騙して中国に脱北させ風俗業に従事させたり、結婚相手がいない中国人に売り払ったりするのが一般的な手法だ。当局は厳しく対応しているものの、一向に後を絶たない。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、今月18日に恵山(ヘサン)市内にある両江道裁判所の前で、公開裁判が行われた。被告6人のうちの1人、40代のパク被告は有名な脱北ブローカーだった。

パク被告は、脱北幇助と人身売買で荒稼ぎし、その裕福な暮らしぶりは地元で知らぬ人がいないほどだった。何度も逮捕の危機に直面したが、そのたびに保衛部(秘密警察)にワイロを渡して事件をもみ消してきた。ところが、今回ばかりはそう行かなかった。

恵山から北に80キロ離れた三池淵(サムジヨン)では、大規模な開発工事が行われている。金正恩党委員長は並々ならぬ関心を見せ、何度も現地を視察し、年頭の施政方針演説にあたる「新年の辞」でも言及したほどだ。

全党、全国、全人民が奮い立って三池淵(サムジヨン)郡を山間文化都市の標準、社会主義の理想郷として立派に一新させ、元山(ウォンサン)葛麻(カルマ)海岸観光地区と新しい観光地区をはじめわれわれの時代を代表する対象建設を最高の水準で完工すべきです。

パク被告は、そこの現場で突撃隊員(無給の建設労働者)として働いていた20代の女性2人に接近、何らかの方法で中国に売り飛ばしてしまった。

それを知った突撃隊の幹部は激怒した。

「今回の事件はお上(金正恩氏)が神経を使っている事業のイメージに傷をつける事件だと、突撃隊が問題を提起し、抑えられないほど大きくなってしまった」(情報筋)

被害者が三池淵の突撃隊員でなければ、パク被告もカネでもみ消せただろうというのが地域住民の見方だが、最高指導者が心血を注ぐ事業に携わる女性を人身売買したとなっては、いくらワイロを積んだとしても見逃されない。結局彼には6年の教化刑(懲役刑)が言い渡され、平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)教化所に収監された。

言い渡された量刑を巡り、地域住民の間では「軽すぎる」との声が上がっている。

人身売買は死刑にされてもおかしくないほどの重罪で、北朝鮮国民の応報感情も強い。

パク被告は保衛部にワイロを渡し続けてきたことに加え、彼とグルになっている幹部も多いので、6年では済まされたのではないかというのが地域住民の見方だ。

「金持ちの彼は教化所に入ってもさほど苦労することなく、病気だからと釈放される可能性が高い」(地域住民)

世界最悪の人権侵害国家と言われる北朝鮮だが、その中でもさらにひどいのが教化所、管理所(政治犯収容所)などの収監施設だ。食糧、衛生状況も劣悪で、一度入れられたら死を覚悟しなければならないほどだ。しかし「地獄の沙汰も金次第」とも言う。たった数ヶ月で釈放されたとしても、何ら不思議ではないのが現在の北朝鮮だ。