被爆女性を題材に企画展 追悼祈念館 手記、資料など30点展示 外傷、偏見、差別…苦悩 克明に

 長崎原爆で被爆した女性を題材にした企画展「女性たちの原爆」が30日、長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館で始まった。外傷、偏見、差別-。女性20人の手記には、戦禍を生き残った末の苦悩が克明に記されている。
 「顔の傷を隠すため、毎日厚化粧をしました」
 故淵本玲子さんの手記には、被爆後の結婚にまつわる苦悩が記される。16歳の時に爆心地近くの三菱長崎兵器製作所大橋工場で被爆。気が付くと建物の下敷きになっていた。「両方の頬に手をあてると、ズブリと切り裂けた右頬の中に深く入った」。外見に悩み、周囲から結婚に差し障ると言われた。被爆から12年後に「厚化粧でカモフラージュ」し結婚を果たすが…。
 故田口通子さんは20代前半からケロイドが出て体が弱っていった。「何のために生まれてきたのだろう」「私の青春は終わった」と絶望感をつづる。原爆で夫を亡くした故山田セモさんは女手一つで2人の子どもを育てた。「家を無くし、夫を亡くした母子が、どうしてその後を生きてきたか、その生活は書きたくない」と記している。
 結婚や出産にまつわる周囲の偏見、家族に被爆の事実を隠し続けた苦悩などが書かれた手記も展示している。同館の担当者は「原爆は多くの命を奪っただけでなく、多くの人に悲惨な人生をもたらしたことを知ってほしい」と話している。
 企画展では手記や関連資料など約30点を展示。12月25日まで、入場無料。

被爆した女性たちの苦悩がつづられた手記=国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

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