再生ファンド「MTM」の早瀨社長、現状を語る

 家電量販店の「ラオックス」やゴルフクラブメーカーの「本間ゴルフ」など、多くの事業再生の実績があるマイルストーンターンアラウンドマネジメント(株)(TSR企業コード:296291099、千代田区、以下MTM)。最近では山形県の老舗百貨店「大沼」や岩手県の旧中三盛岡店を引き継いだ商業施設「ななっく」、箱根の老舗旅館「俵石閣」など、各地の有力な百貨店やホテルの再生を手がけている。
 昨夏から、MTMの様々な情報が流れていた。MTMの早瀨恵三社長は東京商工リサーチ(TSR)の単独インタビューに応じ、現状と今後の展望を語った。
 早瀨社長は、「(今は)言えないことが多い」と慎重に言葉を選びながら口を開いた。百貨店「大沼」については、「店舗運営側とMTMで意思疎通がうまくいかず、再建が遅れている」と不振を認めた。今後のファンド運営については、「百貨店の再生案件の新規をやりたい」と、現状の脱却に向けた展望を語った。

事業再生の遅れの理由

 MTMが支配権を持つ主な再生案件は、百貨店の(株)大沼(TSR企業コード:210002948)、商業施設のななっく(株)(TSR企業コード:172604915)、箱根の旅館・俵石閣の俵(ひょう)石(せき)ホテルアンドリゾート(株)(TSR企業コード:300294689)、「ザ・ニューホテル熊本」を運営する熊本駅前ビル(株)(TSR企業コード:910198098)など。兵庫県の百貨店(株)ヤマトヤシキ(TSR企業コード:670003867)は共同投資案件だ。
 早瀨社長によると、MTMの事業再生に向け投資残高は現在60億円超。このうち、MTMの自己投資が20~30億円で、投資家から資金を得ているファンドは30~40億円程度という。
 早瀨社長は、「詳細は控えるが、環境が変わり、人員を縮小した」とMTMの現状を話した。
 問い合わせの多い不動産の情報は、「事務手続き上の問題」と説明。大沼については、「事業改善プログラムを用意しているが、実行できていない。大沼の幹部とMTMの連携がうまくいかず、機能不全に陥った時期もあった」と不振の理由を述べた。
 ななっくについては、「我々は盛岡を重要視している。建物(の規模が)が大きく収支は取り辛いが、再開発などを進めたい」と積極的に再生にしていく姿勢を示した。
 俵石閣は、「今年1月からホテル運営を他社に任せ、持株比率も6割まで落とした。稼動率も上がっており、改善していくだろう」と経営の枠組みの変更を明らかにした。
 熊本駅前ビルは「売却の方針」。ヤマトヤシキは「(再生を)主導しているラオックスと連携して進めていく」と答えた。

 早瀨社長は、「我々の方針ははっきりしている。地方都市に拠点を設け、浮上させることが狙いだ。今後は百貨店の再生、特に新規案件に力を入れたい」と力を込めた。
 経営不振に陥っている地方の百貨店は多い。だが、事業再生に実績を残しても、現場には現場の事情もあり、計画通りに再建が進んでいない案件もある。
 MTMがこれまでの事業再生の経験をどう活かし、今後に向かうのか注目される。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月1日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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