現在ポルティモネンセでプレーしている日本代表FW中島翔哉。今冬のマーケットでカタールの強豪アル・ドゥハイルに移籍する可能性が高いと言われる。
その移籍金は3500万ユーロ(およそ45億円)であると伝えられており、それが真実であればかなりのビッグオファー。ポルティモネンセの監督も「彼は既に売られた」と話し、交渉が実際に進んでいることが明らかになっている。
中島翔哉がカタールに行くことはどうなのか?賛否両論が渦巻く状況にあるが、彼が中東でプレーすることによるメリットを5つのポイントであげてみよう。
カタールでワールドカップがある
2022年にワールドカップ開催を控えているカタール。もちろん中島翔哉もそれをターゲットにしているはずだ。
オーストラリアは中東での試合に弱いことがよく知られている。そこには独特の環境、気温、気候、空気感があり、中東の選手も特有のリズムを持つ。それに馴染むことは簡単ではない。
一方でUAEでプレーしている塩谷司を見ればわかる。慣れていればすぐに試合で対処できる。だから彼はこのアジアカップでも信頼できる存在になっている。
中島翔哉がカタールに行けば、日本代表にとってはアジア予選で欠かせないピースになる可能性は高いし、本大会もいいコンディションで臨めるだろう。そしてワールドカップで活躍すれば、ビッグオファーも夢ではない。
環境に恵まれている
中島翔哉には年350万ユーロの給与が支払われると言われており、資金的には非常に恵まれているカタール。同時に、備えている施設も世界有数のレベルだ。
欧州の中堅クラブと比べればあまりにも充実している。それは怪我をした際のケア、これから上を目指すためのトレーニングにおいて非常に重要なものになるだろう。国立の選手育成機関であるアスパイア・アカデミーは、様々なクラブがキャンプをするために欧州から足を運んでくる場所だ。
怪我によってキャリアを停滞させてしまう選手は多い。もちろんアル・ドゥハイルでも、先日ナム・テヒが重大な故障を負って長期離脱を余儀なくされており、だからこそ中島翔哉を獲得したいと考えているのだろうが…。
ただ、欧州のクラブでは常に激しい競争を強いられ、井手口陽介のように早期復帰からの再発をする可能性もある。カタールならば十分に休息を取れる余裕もある。
恵まれすぎてハングリーさを失う選手は少なくはない。特にブラジル人選手は馴染んでしまう傾向があるが、生粋のサッカー小僧である中島翔哉がそうなる心配はないだろう。
いい指導者がいる
現在カタールには欧州から多くの有力指導者が呼ばれており、その結果がアジアカップで見せた組織的なサッカーだ。
個人能力ではイランやサウジアラビアに及ばずとも、ペースを握らなくても勝てる忍耐力と試合を読む力、システムを変えられる応用力、基礎となるテクニックが本当に優れている。
カタールのユース代表を見たことがある人なら感じられると思うが、決して強くはないが「勝負だけにこだわらず、よりディテールにこだわる」試合をしている。
個人能力に優れた中島翔哉が、モウリーニョの下でフィットネスコーチを務めたルイ・ファリアの下でコンディショニング、戦術を学んだらどうなるのか?否が応でも期待が高まるではないか。
アル・ドゥハイルでルイ・ファリアがいつまで持つかはわからないが、次に来るのも世界トップクラスの監督になることは間違いない。中島翔哉にとって最高の学習機会になるはずだ。
スケジュールと移動が楽になる
日本代表を引退した長谷部誠がブンデスリーガで絶好調だ。欧州と日本の往復、そして欧州サッカーのハードスケジュールがどれだけ選手にダメージを与えているか、それを証明している。
カタール・スターズリーグは全20節で、それほど過密な日程にはなっていない。カップ戦はあるが、そこではメンバーを入れ替えることが可能だ。また、ACLがあるときにはすぐに試合を延期するなど協会のサポートも手厚い。
移動も容易になる。アジア予選でも欧州遠征にもすぐに対応でき、ハマド国際空港は世界中と繋がっている。サウジアラビアやUAEとの国交が回復されればさらに…。
また、リーグの中でもクラブ間で実力差がハッキリ存在するため、酷使されることもないはず。自分が緩んでしまうようなことがなければという条件付きではあるが、選手にとっては好条件が揃う。
お金だけではないそれぞれの価値
カタールと言えばお金。さすがに、中島翔哉に3500万ユーロ(およそ45億円)を投じるクラブは欧州に存在しないと言っても、失礼にはならないはずだ。
一旦価値が上がってしまうとなかなか選手は移籍できないもので、クラブも安い価格で手放したくはないし、代理人もクライアントの価値を下げることを好まない。
中東では選手の契約問題もよく問題になり、パスポートを没収されて国外に出られなくなったり、給与が支払われなくなったケースもある。簡単にカタールを離れることは出来ないだろう。
ただ、クラブワールドカップでプレーしたカイオが欧州からも注目を集めたことを考えれば、中東のリーグが全く無視されているわけでもない。欧州の中堅でそこそこのプレーをするよりは、カタールの強豪にいたほうが目を引く可能性すらある。
そして決して欧州でプレーをすることこそ最も幸せだというわけでもないのだ。その国で英雄になることも重要であるし、カタールリーグはレベルも低くはない。
中島翔哉の個人的な目標が欧州ビッグクラブでプレーすることであるとしても、それが達成されることが幸せになるかどうかはわからない。日本代表のためになるかどうかもわからない。宇佐美貴史のようになる可能性もあるのだ。
むしろイラクの名FWユーニス・マフムードのように、カタールでプレーしつつ代表で大きな結果を残すことで日本の英雄になれるかもしれない。