インターネット投票で何が変わる?エストニアの選挙から見えてくること

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統一地方選挙と参議院選挙が行われる選挙イヤーを迎え、選挙に関する報道も増えてきました。そのなかで注目したいトピックの1つにインターネット投票があります

インターネット投票を巡る動き

インターネット投票を巡る情勢は昨年大きく動き出しました。総務省の研究会はインターネット投票の実施を含む提言をまとめ、平成31年度予算案に検討費用2.5億円を計上しています。また、茨城県つくば市では市の事業に対するインターネット投票が実施されています。
若者と政治の観点では、若者が投票するためのハードルを下げる手段としてインターネット投票の実現がしばしば提言されていますが、いよいよインターネット投票が実現されるのでしょうか。
インターネット投票が実現されるとどのような変化や効果が見込まれるのか、確認してみましょう

エストニアでは投票の3割がインターネット投票によるもの

国政選挙ですべての国民を対象にしたインターネット投票を実施している唯一の国がエストニアです。
エストニアでは2005年の地方選挙からインターネット投票が実施され、2007年には国政選挙にも導入されています。

図表1_エストニアにおけるインターネット投票の利用状況

図表1では、2010年代の選挙におけるインターネット投票の利用状況をまとめています。
全投票の中でインターネット投票が占める割合は近年3割ほどになっていることがわかります。それぞれの選挙で初めてインターネット投票が導入されたときの割合は、地方選挙(2005年)1.9%、議会(国政)選挙(2007年)5.5%、EU議会選挙(2009年)14.7%でしたので、年々利用率が上昇していることがわかります。
また、期日前投票に限ってみると、約6割がインターネット投票によるものとなっています。

投票は何度でもやり直せます。エストニアのインターネット投票の特徴

エストニアのインターネット投票の特徴に、何度でも投票し直せることがあります。実際、インターネット投票の内2~3%程度は複数回投票されています。
日本でのインターネット投票を巡る議論では、特定の候補者に投票するように強制される事態など「投票の秘密」に対する懸念が示されています。そのことに対して、一度投票した内容を後から何度でも上書きできることは一定の対策となりえます。
また、インターネット投票よりも投票所で行う紙での投票を優先していることも特徴の1つです。
インターネット投票をした人が投票所を訪れ、紙での投票をした場合は、紙での投票結果が優先されます。毎回の選挙で概ね100名程度にこの仕組みが適用されています。
このように複数回投票できる仕組みの中で、集計時に二重投票となる事態が生じるのを防ぐためにエストニアの選挙でインターネット投票ができるのは期日前投票に限られており、期間も投票日の10日前から4日前までの7日間のみとなっています。
2011年からは、IDカードリーダを用いずに携帯電話を用いて個人認証を行うことも可能になっています。携帯電話を使った個人認証の利用率は徐々に上昇しており、前回の地方選挙ではインターネット投票の1/4を占めるまでになっています。

インターネット投票をよく利用している世代は?

図表2では、インターネット投票利用者に占める年齢別の構成とエストニアの年齢別人口を比較しています。

図表2_エストニアのインターネット投票利用者、人口の年齢構成

議会選挙、地方選挙ともに20歳代後半~50歳代前半までの世代が占める割合は、インターネット投票利用者の方が人口よりも大きくなっています。
年齢別投票率そのものと比較をしていないため断言はできませんが、インターネット投票は日本で投票率の低下が指摘されることの多い20代後半や30代前半などの世代で積極的に利用されている様子がうかがえます。

インターネット投票がもたらすメリット

市町村合併などの影響もあり、日本の選挙での投票所数は減少傾向にあります。また、グローバル化が進み海外で活躍する方々も増えていますが、その方々が投票しづらい環境に置かれてしまっている状況も続いています。加えて、若い世代の有権者の中には投票所が開いている時間に投票に行く時間を捻出できないと感じている人たちも一定数いるものと思われます。
インターネット投票が導入されることで、これらの不具合に見舞われていた方々の状況改善を期待することができそうです。

インターネット投票を巡る議論をきっかけに考えたいこと

一方、インターネット投票を日本で導入するためには、技術、コスト、運用方法のそれぞれで問題が指摘されています。また、FAXや移動投票所などの代替案の提案もあります。
そのため、規模など条件面での問題が限定的な在外投票や民間での事例を蓄積してから、インターネット投票の導入可否が論じられることになりそうです。
インターネット投票を巡る議論では、居住地や就業時間・ライフスタイルなどの特定の条件に合致する人が投票しにくい環境に置かれている状況に対して光が当てられました。様々な政策課題に対して「選挙で示された民意」が強調されることの多い昨今の風潮の中では、これらの不具合はとくに優先して改善していくことが求められます
今年は日本中で数多くの選挙が行われますが、投票をしにくい状況に置かれてしまっている人たちの状況を改善するためにどのように取組みが実践されていくのか注目されます