議員の実情 2019 統一地方選アンケート(9完)<中村県政への評価> 平均65点 危機感の現れか

 「全線フル規格実現に向け、残された課題解決に全力を注ぎたい」。県庁の仕事納めとなった昨年12月28日。この年最後の定例会見で、中村法道知事は懸案の九州新幹線長崎ルート整備に関し、こう力を込めた。

 同ルートを巡っては、フリーゲージトレイン導入が白紙となり、与党検討委員会は全線フルとミニ新幹線に絞り協議。本県側は全線フルを求めているが、佐賀県側は地元負担増から難色を示し、膠着(こうちゃく)している。

 「3期目だから厳しく言う。知事を10年近く務めた成果を示してほしい」。定例会見の発言を伝え聞いた県議の田中愛国(74)は語る。

 元県職員の中村知事は2010年、自公の支援を受け初当選。それだけに、当時、自民県連幹事長だった田中にとって、中村知事への思い入れは強い。中村県政への評価は「70点」。県職員との一体感は感じるが、国や隣県への「政治力」に課題が残るという。

 新幹線だけでなく、西九州自動車道や島原道路など、実現に「政治力」が必要な交通インフラはほかにもある、と田中は言葉を続ける。「知事が自らやるか、国会議員と連携してやるしかない」

 「民間の感覚が足りない」と指摘するのは同じ自民県議、前田哲也(55)だ。知事が掲げてきた県民所得向上施策について「手法や予算編成にドラスチックな変化がない」と手厳しい。財政難の中でのやりくりを一定評価しながらも、医療や福祉などの重点分野に予算を確保するためには「人件費に切り込むべきだ」と思い切った対応を求める。

 議員アンケートで中村県政を100点満点で採点してもらったところ、平均「65点」だった。80点台が84人と最多だった半面、50点未満も計39人とばらけた。

 県議だけで見ると、平均は「73点」。「行政運営に安定感がある」と手堅さへの評価が目立ち、人口減など県政課題への姿勢についても「真摯(しんし)で勉強熱心」と好意的な見方が多い。一方で「リーダーシップが足りない」「新規事業に積極的でない」との指摘もある。

 市町議会では「離島振興に力を注いでいる」(五島市議)と離島で高く、佐世保など県北地域で低い傾向。同地域の議員からは県北の産業振興や道路網整備を求める声が上がった。

 平均点「65点」-。これを健闘と見るか、否か。受け止め方はさまざまだろうが、満点に遠い数字は、若者の流出や過疎化など本県が直面する現状への強い危機感の裏返しにも見える。

 課題山積の中、議員自らの責任や役割を問い直す声もあった。あるベテラン県議は議員提案の条例を増やし、事業仕分けで行政のチェック機能を果たすべきだと訴える。「議員ももっと知恵を絞らないといけない」。そして有権者にも注文する。「(行政や議会への)無関心や放置のつけは有権者自身に回ってくる」

 古里の未来をどう切り開いていくか。問われているのは知事の手腕だけではない。

 =文中敬称略=

 ■調査方法■ 長崎新聞社が長崎県内全ての地方議会(長崎県議会、13市議会、8町議会)の全議員435人(当時)を対象に実施した。昨年10月末からアンケート用紙(回答は選択肢と自由記述)を配布し、同12月中旬までに回収。403人から回答(回収率92.6%)を得た。

中村県政は何点か
3期目の中村知事。議員アンケートで中村県政への評価の平均点は「65点」だった=長崎県庁

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