日欧EPA発効 県内反応 生産者、価格下落を警戒 小売り、消費者は期待

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が1日、発効した。EUからの輸入ワインやチーズ、豚肉がこれまでより安く出回る見込みとなり、県内の小売店や消費者は期待する一方、生産者は競争激化や国産価格の下落を懸念する。
 ワインの関税は即時に撤廃された。ゆめタウン夢彩都(長崎市)は1日から13日まで、発効を記念し欧州産ワイン約100種類を集めたフェアを開く。750ミリリットル入りのボトルワインは50円、スパークリングワインは150円値引きする。
 取り扱うワインの6割以上が欧州産という卸売・小売業のウミノ酒店(長崎市)は関税撤廃で「消費者が手に取りやすくなる」と期待。長崎市のパート職員の女性(60)は「これを機に、いろんな種類を楽しみたい」と歓迎した。
 これに対し、生産者側は安い輸入品の流入を警戒。冠婚葬祭やホテル、飲食事業を展開するメモリードグループ(総合本部・西彼長与町)が運営する五島ワイナリー(五島市)は、同市内産などのブドウを使ったワインを年間約5万本製造する。担当者は「価格競争は厳しいが、自社で栽培から醸造までを手掛けているというプレミアム感を追求していけば差別化は図れる」と話した。
 チーズは、カマンベールなどに低関税の輸入枠を設け、EPA枠内の関税は16年目に無税となる。チーズ専門店「タチバナフロマージュ」(長崎市)は「対象のチーズは一部。製造経費も年々上がっていることから、価格動向に注視したい」と説明。飼育する乳牛の生乳を使ってモッツァレラチーズなどを製造販売する「さとむら牧場」(佐世保市)の里村貴司代表(40)は「影響はまだ分からない部分が多い」とし、「チーズの質をさらに高めていくしかない」と話した。
 乳製品の原料となる国産生乳の多くは北海道で生産されている。チーズなどの輸入が増え生乳が余剰になれば「他の都府県に流れ、飲用乳に影響が出る恐れがある」(県農政課)という。
 豚肉の関税も価格帯によって撤廃や引き下げとなる。農林水産省によると、2016年度の豚肉の国内生産量は89万4千トン。輸入量は87万7千トンで、このうち欧州産は約35%を占めた。自社栽培した米を飼料にしたブランド豚「諫美豚(かんびとん)」を育てる土井農場(諫早市)の土井賢一郎代表取締役(52)は、「国産豚肉の価格下落が気掛かり。将来的に日本の農家はつぶれてしまうのでは」と懸念。打開策として海外への輸出も視野に入れたいとした。

ウミノ酒店で販売しているワイン(上)とタチバナフロマージュで陳列しているチーズ

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