スポーツ産業 成長の余地 ツーリズム振興が鍵 「V長崎」活用など好例 2019年版九州経済白書

 九州経済調査協会(九経調、福岡市)は31日、「スポーツの成長産業化と九州経済」と題する2019年版の九州経済白書を発表した。スポーツは裾野の広い産業として九州でも成長の余地があると指摘。持続的な地域や経済の活性化につなげるため、観光客誘致が期待できるスポーツイベントと観光を結び付けた「スポーツツーリズム」の振興や、スポーツを通じた地域活性化の中心となる人材、組織などの育成が必要とした。
 政府はスポーツの成長産業化を成長戦略の柱の一つに掲げている。九州でも今年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会など大規模なイベントが控えており、スポーツを地域や経済の発展につなげられるかが課題となっている。
 白書では、九州・沖縄の12年のスポーツ市場規模が約6300億円だったとする日本政策投資銀行(東京)の推計を紹介。「一定の厚みがあり、成長の可能性にも期待が持てる」と分析した。中でも、スポーツツーリズムを含む「旅行」分野は、自然豊かな九州にとって強みになると指摘。イベントの企画、誘致や情報発信などをワンストップで実施できる組織づくりや、地元の実情に精通し、ビジネスの視点も持ったコーディネーターのような役割を担う人材の確保が求められるとした。
 スポーツを生かした取り組みとして、長崎市がサッカーのV・ファーレン長崎の対戦相手のサポーターに向け、会員制交流サイト(SNS)などで効果的なPRを展開した例や、大村湾周辺自治体が広域経済圏として“大村湾ブランド”を発信する自転車イベント「大村湾ZEKKEIライド」などを挙げた。
 一方、各地のスポーツに使う大型施設は維持費がかさみ、自治体財政の圧迫要因となっていると指摘。これに対し、通販大手ジャパネットホールディングスが長崎市に計画しているスタジアムを中心とした多機能型の施設構想を「『スタジアムを中心とした新しいまちづくり』を具現化した先駆的な取り組み」とし、長崎の地域経済に好影響を与えることが期待されるとした。

全国と九州・沖縄のスポーツ産業市場規模比較(2012年)

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