H&M、ILOと新たな協定を締結し労働条件改善へ

DBLグループの工場で働く女性。バングラデシュ

H&Mグループはこのほど、繊維・衣料産業のサプライチェーンにおける労働環境を改善するためにILO(国際労働機関)と新たな協定を締結し、協働関係を拡充したことを発表した。両者は2001年からカンボジアやバングラデシュなどで、賃金向上や労働環境の改善に取り組んできた。新たな協定では、協働の範囲を拡大し、SDGs(持続可能な開発目標)とディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をさらに推進していく。(オルタナ編集部=吉田広子)

H&MグループはH&M以外にもCOSやインテリアブランド「H&M HOME」などを展開し、オンラインやフランチャイズを含め71の市場に4900以上の店舗を持っている。2018年の売上高は2440億スウェーデンクローナ(約3兆円)に上る。

同協定の中心となるのは、ILOと国際金融公社が共同運営する「ベターワーク(より良い仕事)プログラム」だ。バングラデシュ、カンボジア、ハイチ、インドネシア、ヨルダン、ニカラグア、ベトナムの7カ国で、従業員約220万人が働く約1600工場で実施されている。

グローバルな衣料産業は、数百万人に上る雇用機会を創出してきた一方で、さまざまな労働問題を抱えている。ILOによると、国内労働法に従っていない賃金や労働条件や、結社の自由や団体交渉権が制限されている場合もあるという。法定最低賃金が必ずしも適用されず、生活できないほど低く設定されている場合もある。

ILOとH&Mグループは、政府や労働組合らと協働しながら、繊維・衣料産業の労使関係を全面的に変える必要があると表明している。

H&Mグループのサステナビリティの責任者であるアナ・ゲダ氏は今回の新たな協定を締結するにあたり「サプライチェーン内の労働条件と生産性向上に取り組むには、労使関係の強化と社会的対話が欠かせない。ILOとの長年のパートナーシップのおかげで、この目標に向かって共に取り組むことができる」とコメントしている。

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