難病ドラベ症候群の娘救いたい 父、治療薬承認へ署名集め奔走

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ドラベ症候群のてんかん発作を止める薬の早期承認を求める電子署名を呼び掛ける貞本さん(右)=26日、京都市下京区 

 「多くの人に病気の存在を知ってもらい、薬の早期承認を目指したい」。難治性てんかんの一つ「ドラベ症候群」の9歳の長女がいる京都市内の男性から、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に、切実な訴えがLINEで届いた。てんかんの発作を止めるのに有効とされる薬は現在、国内では未承認。男性は昨年12月に電子署名のサイトを立ち上げ、家庭や学校などで使えるようになるよう、賛同者を募っている。

■同じ病気の子相次ぎ亡くなる

 ドラベ症候群は主に乳幼児期に発症する指定難病。発熱や入浴で発作が起き、早急に鎮めないと急性脳症を発症したり死に至ることもあるという。「ブコラム」という経口治療薬が開発され、効果があるとして、海外では多くの国で一般に普及しているが、国内では未承認となっている。

 この治療薬の早期承認を訴えるのは、伏見区の保育士貞本建太さん(34)。長女実音(みお)さん(9)が1歳になるころにドラベ症候群と診断された。

 同じ病気で苦しむ患者の家族会があると知って入会し、悩みを共有する中で、昨年11月に他の会員らが4歳と6歳の子を相次ぎ亡くした。衝撃は大きく「薬が使えたら助かったかもしれない」と考え、早期承認へ賛同を求める電子署名活動を翌月から始めた。

 並行して、街頭に立って直接訴えることにし、昨年12月に続いて1月下旬も、下京区の四条河原町で通行人に病気の説明をしたり、電子署名の協力を仰いだりした。今後も粘り強く活動を続けるつもりだ。署名は1日現在、約1万5千筆が集まっており、一定の数に達した段階で厚生労働省に提出する。

■体調管理に細心の注意

 実音さんが難病と診断されたのは2010年のことだ。聞いたことのない病名。情報を得ようとインターネットで調べると、発症率は2万~4万人に1人(患者家族会)というまれな病気で、「4歳ぐらいまでに命を落とす子が多い」「歩けない、話せない」など、「ろくなことが書いてなかった。すごく重い病気なんやと思った」と貞本さん。家族の暮らしは一変した。

 特に気を遣うのが発熱だ。体温が上がり熱が体内にこもると発作につながる。風呂につかることもできず、夏の暑い日は外出さえままならない。実音さんの調子が悪く、家に引きこもる日が続いた時は「外を歩く親子を窓から眺めて悲しくなった」と話す。

 体調管理にも細心の注意を払う。定期的に水分補給し、外出時にはアルコールスプレーが必須。人混みを避け、かぜ気味の子がいると一緒に遊ばせない。かぜやインフルエンザにかかると命にも関わりかねない。「普通の人からは潔癖症と見えるかもしれないが、『まあいいか』が許されない」。リスクを避けるため、家族全員が規則正しい生活を送るようにしている。

 実音さんは、日中は近くの北醍醐小(京都市伏見区)の特別支援学級に通う。周りと比べて成長はゆっくりだが、「自分でできることが増えて、弟の面倒をみたりもしてくれるようになった」と貞本さんは目を細める。命の危険と常に向き合い、緊張の糸が解けない生活。それでも「何事も起こらず夜に家族で川の字になって寝られる時、幸せを感じる」。

 そんな中、自身も所属し交流のあった患者家族会の会員らの子ども2人が、昨年に続けて亡くなった。貞本さんには何よりショックだった。

 同会は、発作を止める経口治療薬「ブコラム」の早期承認を求めて署名活動を展開していた。17万筆超を集め厚生労働省に提出し治験が開始されたが、治験を実際に行える医療機関はまだ少なく参加者も集まりにくいためデータ不足で、進んでいないのが実情。「承認が間に合っていれば、助かっていたかもしれない命」と悔やむ。

 この出来事を機に、電子署名の活動を1人で始めた貞本さん。最愛の娘、また同じ病で苦しむ子どもたちの笑顔を守るために訴える。「まずこの病気や現状の問題を知ってもらうこと。『もし自分の子だったら』と自分事として捉えてもらえれば」。治療薬承認には「社会を動かすほどのインパクトが必要」と、市民に広く協力を呼び掛ける。

■日本人のデータが必要

 「ドラベ症候群」の治療薬として有効とされる「ブコラム」について、厚生労働省医薬品審査管理課は「呼吸抑制や呼吸困難など強い副作用の例も報告されており、使い方を誤ると危険」と承認には慎重な姿勢。海外の治験データも参考にするが、外国人とは体質や生活習慣などが異なるため、日本人のデータを一定数集め評価する必要がある、とする。

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