議員の実情 インタビュー編(上)<なり手不足> 学習院大法学部教授・野中尚人氏 運用、選挙制度の変更を

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 人口減などで全国的に地方議員のなり手不足が深刻化している。また、投票率低下、「政治分野の男女共同参画推進法」成立で求められる女性議員の増加といった課題もある。私たちのまちの未来に一票を託す統一地方選が今春に迫った。連載「議員の実情」インタビュー編では、「なり手不足」「女性の活躍」「政治倫理条例」の各テーマについて識者に意見を聞いた。
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 なり手不足を一因に無投票選挙区が増えており、相当深刻な状況だ。自分たちの代表者を満足に選べず、住民の考えを議会に反映するシステムとして極めて貧弱。日本の人口が増え、高度成長した時代であれば、まだいい。だが現代は人口が減り、国の財源も当てにできない中、これでは住民のためのきめ細かな政治など不可能だ。その点で戦後から続いた議会や選挙の仕組みは、完全に時代遅れといえる。

 理由は大きく二つ。一つは、議会の運用が立候補を制限している点。子育て中の女性も出やすいように会期制を改めたり、議会審査は子どもが学校に行っている昼間の時間帯だけにしたりと、議会の在り方を抜本的に変えるべきだ。

 もう一つは、選挙制度。例えば県議選の定数1の選挙区で現職が強いのは当たり前。その状況で新人が立候補するハードルは高く、立候補をあきらめる人がいるはずだ。だから無投票になる。ならば、1人区をなくすよう選挙区の区割りを変えて議員総数を増やし、女性枠を設定すればいい。もちろん報酬は大幅にカットする。

 地域ごとに定数が決まっている県議選を比例代表制にするのも一つの考え方。「議会に地域の代表がいなくなる」との心配もあるだろうが、果たして地域の代表は不可欠だろうか。確かに陳情をするときなどに、地域選出の議員がいればやりやすい面はある。だが、陳情のために議員を置いていても展望は開けない。それ以前の問題だ。

 制度以外では、有権者に関心を持ってもらうことが第一歩。有権者がもっと議会に関われるようにするべきだ。

 議会とは本来、本会議で物事を決定し、委員会はそのための準備作業をする場。だが現状は、委員会の一部の議員だけで審査した内容が本会議で報告され、そのまま決まってしまうことがほとんど。そうではなく、委員会審査の過程に有権者との意見交換の場を積極的に、大胆に設けることを提案したい。多様な意見を聞いた上で、正式な決定は議員がすれば何の問題もない。

 世界に目を向けると、ヨーロッパのかなりの場所では、居住地の自治体の議員をしながら近隣自治体の公務員として仕事ができる。日本は兼職兼業に厳しいが、選挙に出たい人が立候補できるように変えていくべきだ。

 これまで述べたことはどれも、現状の仕組みを少し変えるだけで実現可能。今の時代に合った形で、いかに自分たちの代表者を選んでいくのか考える時期に来ている。

 【略歴】のなか・なおと 高知県出身。東京大学大学院修了。学習院大助教授を経て96年から現職。専門は比較政治、日本政治。60歳。

「抜本的な選挙制度改革を検討しなければいけない」と語る野中教授=東京都豊島区、学習院大